アトリエ・マイルストンブログ

2014年11月10日月曜日

フェルメールの「働く女性」

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「 名作美術館(その96) 」
静謐の画家フェルメール:その3「働く女性」

「レースを編む女」1669~70年頃             「牛乳を注ぐ女」1658~60年頃
    23.9 x 29.5cm、ルーブル美術館        45.5 x 40.6cm、アムステルダム国立美術館

手紙を読む姿など、女性像を多く描いた画家ですが、労働に勤しむ女性を描いたのはこの二作のみです。
いずれも想像以上の小品で、無地の背景と衣服や布の青や黄色の補色対比が美しい画家の代表作です。


上画像は「レース~」の部分(クリックで拡大)ですが、襟元のレースに遊ぶ光の斑紋が点描されて美しいです。
また人物手前のクッションに見える糸はレンズのピンボケのようで、抽象的色班がやはり美しい描かれ方です。

上画像は「牛乳~」の部分(クリックで拡大)で、やはりパンや篭の表面の粒子が点描で表され、壺もまた然りです。
この比類無き天才画家がカメラ・オブスキュラを制作に用いていたのではないか、と推測される所以でもあります。
また女性頭部(顔)の皮膚や額の頭骨の表現も素晴らしく、油絵具ならではのコクとネットリとした質感が見事です。
いずれにせよ、
主題が労働とは言え、衣擦れや吐息さえ聞こえて来るような静けさと視線の集中による適度な緊張感が秀逸です。
飾り気の無い質素な日常の中にも普遍的な美を見いだし表現する、心と目と技を持った画家の類い希な名作です。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その120)」

今日の当コーナー、上の作品繋がりと言うことで、筆者の脳裏に再現された音楽をお届けします。
国や時代はかなり違いますが、「聖母の御子」のような つましい旋律が似つかわしい気がします。

「聖母の御子」~「ディープ・リバー」 メドレー / 辻 千絵 ( ピアノ )
El Noi de la Mare ( The Son of Mary ) ~Deep river / Chie Tsuji (Piano)
演奏者は、北海道は札幌在住のピアニストです。
キース・ジャレットを彷彿とさせる透明な音空間が、静謐の画家フェルメールにマッチしているとは思いませんか。

By 講師T