月曜日・梅雨の晴れ間
「名作美術館(その128):半・室内、半・風景画」
川端龍子(りゅうし)、「佳人好在」、大正14年(1925年)
136 x 115cm、絹本・着色、京都国立近代美術館・所蔵
近代日本画界の異端、川端龍子の戦前の作品です。
季節は不明ですが、筆者が勝手に梅雨時の曇天の雰囲気を感じ、今回の紹介となりました。
季節は不明ですが、筆者が勝手に梅雨時の曇天の雰囲気を感じ、今回の紹介となりました。
描かれているのは、とある和室の食膳と、長い庇(ひさし)と竹縁台の向こうの庭の様子です。
漆塗りのお膳の料理は一流の板前料理人の手によるものらしく、食器もまた立派な品物です。
美しい畳に加え、庇や天井・障子窓・半閉じの雨戸などの設えも地味ながら、上質な造りです。
美しい畳に加え、庇や天井・障子窓・半閉じの雨戸などの設えも地味ながら、上質な造りです。
庭に目を転ずれば、シダや万年青(オモト)やヤツデらしき日陰を好む植物に囲まれた池が見えます。
左上の軒先の木にはカワセミらしき野鳥の姿もあり、池の中の鯉でも狙っているのかもしれません。
室内・屋外を包む光はあくまでも柔らかく、開放的ではない庵(いおり)のような佇まいが感じられます。
それもそのはず、画題の佳人とは美しい女性を指し、好在の意味は不明ながら、画家の心情では・・・。
限られた室内と庭の一角を見ているだけで、筆者の想像・妄想は限りなく広がり、一遍の映画と化します。
ちなみに場所は京都の奥座敷・南禅寺界隈の高級別荘群の一軒との事、社会的名士のみの住処です。
静寂な趣きが漂う庭の池の水も、明治時代に築かれた琵琶湖疏水による引き水なのかもしれません。
緻密に描かれた自然と人工物の細部と、拡散した淡い光とが織りなす非日常世界、見所は尽きません。
前回の当コーナーのボナール作の室内、屋外半々の「窓」との共通点・相反点など、比較も面白いですね。
両作品共に親しみや憧れ、違和感や臨場感など、様々な感情が湧き上がり交錯する奥深い抒情名画です。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その156)」
(画像は別ですが)この曲、以前にもアップしており、今回が2度目の登場です。
上の作品とは直接的な繋がりはありませんが、共通点は梅雨時・曇天の雰囲気です。
「星影」の曲名からすれば晴天なのですが、しっとり感を感じ筆者が勝手にこの時期に聞きたくて選びました。
「星影の小径」/ちあき なおみ
しっとりとしたエアー感ある糸を引くような歌声、遠くなりつつある「昭和」の雰囲気です。
上の絵画作品同様、気品ある抒情はいつ聞いて(見て)も良い気分にさせてくれます。
ともすれば つい鬱陶しい季節と感じてしまいがちですが、この季節ならではの情緒を楽しみたいと思っています。
道すがらの紫陽花たちの移ろいゆく淡い色彩の柔らか花火を道連れに・・・。
By 講師T