アトリエ・マイルストンブログ

2014年10月20日月曜日

フェルメールの女性像、二題

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「 名作美術館(その94) : フェルメールの視座 」

今回は当コーナー初のフェルメールを取り上げます。しかも、いきなり代表作をはずした二題です。

" Girl Red Hat "                                        "  Girl With A Flute "
Johannes Vermeer ( Jan Van der Meer van Delft ) 1632~1675

フェルメールは、レンブラントと共に17世紀オランダ絵画黄金期を代表する画家の1人です。
が、当時から画家は名声を得られず、19世紀フランスの研究者や画家、文学者等によって再発見されました。
デルフトと言う地方都市で生涯を閉じ、作品も全生涯で油絵30点余と僅かで、版画や素描の類は現存しません。 
この美しさにおいて比類無き画家の描く世界は言語による説明は無用で、三次元空間・空気の堆積が絶妙です。
全作品に共通する特徴はご覧のような軟焦点で、細部を描きながらも鋭い焦点は決して結ばないのが特徴です。
それには下記のような暗箱(カメラ・オブスキュラ)と言う道具が、制作に使われていたのではと推察されています。

今で言う写真機の祖先(但しプリントは不可)で、その当時は望遠鏡のようにレンズ的視覚を獲得していました。
磨りガラス上に投影される外界は逆像で、ピントの奥行きも極めて浅く、それが光の滲みやボカシを生み出します。
画家の作品を語る上でその効果が最も顕著なのが上の二作で、イヤリングや背景にその現象が現れています。 
その当時は細密描写を主とする写実主義的絵画の全盛期で、画家の拡散フォーカスは極めて異質なものです。
異端であることで最も美しい視覚世界を造り出したことが、画家の最大無比な視座であり、偉業です。

機会を見て、この静謐・無言な画家の珠玉の作品をこれからもアップする予定でいます。
この天才画家を再発見した人々の感性やその業績に、ただただ感謝するばかりです。

* * *

「 ミュージック・ギャラリー (その117)」

今日の当コーナー、フェルメール繋がりで、その当時オランダで流行したリュート音楽を取り上げました。
フェルメールの作品にも度々登場する楽器で典雅な形状と音色が魅力的で、秋のこの季節に似合います。

Lute Music From a dutch ms. Thysius lute book

秋も深まり、木の葉が黄色や橙色に染まるのを見、かつて訪ねたデルフトの秋を思い出し、今日の特集となりました。
彼の地の静寂さは画家の作品とまさに一致していて、タイム・マシーンにでも身を委ねたような不思議な夢空間でした。

By 講師T