アトリエ・マイルストンブログ

2015年9月24日木曜日

クリムトの淡白風景画ー4

9月21日(敬老の日)・月曜日・晴れ・涼風
(このブログは、9/24にアップしました。)

「名作美術館(その137):クリムトの淡白風景画ー4」

今回も、象徴主義・エロティシズムの画家、クリムトの風景画を2作取り上げました。

「アッター湖の島(アッター湖のほとり)」、1899年頃

「アッター湖畔」

前回、画家が湖に向かって望遠鏡を覗いている写真を紹介しましたが、正にそのものズバリと言った風情です。
望遠鏡レンズの円形こそ四角形に置き換えられていますが、望遠鏡の視界から啓発を受けたような作品です。
両作品共、画面は正方形ではなく僅かに矩形を成していますが、風景画・王道のワイド感を振り払っています。
その代わりの前景からの水面のさざ波の揺らめきが、画面の大半を占める程、大小の筆致で描かれています。

波間で僅かに点在し反射する光の粒子が美しく、その画界はまるで印象派はモネの作品群を彷彿とさせます。
筆者の推測では、画家はモネ晩年の連作「睡蓮」シリーズを意識・触発されていたのではないかと思われます。
この湖畔の別荘に住む画家は、日々移ろい変化する自然界の現象に心を奪われていたのではないでしょうか。
描くべき対象の諸要素を可能な限り絞り、モネ同様の抽象画の世界に足を踏み入れていたのかも知れません。

エロティックな作風が画家の大きな要素ですが、この極端に視野を狭めた静かな佇まいも画家の心の風景です。
画家は私生活に於いて、若かりし頃の「仏陀」同様、放埒な色欲を追求したとの事、その反動かも知れません。
それはまた東洋の禅や仏教思想にも通ずる「色即是空」を、画家なりに具現化した魂の絵画なのかも知れません。
いつしか「秋も夜長」となり、筆者の妄想は尽きません・・・。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その165):秋進み歌」

画家の心の拠り所だったような上述の風景画に、似つかわしいかは定かではありません。
が、曲のタイトルも何故か上述作品にしっかりとハマるような気がしました。
美しい自然は人の心を癒し、浄化する作用があると言われます。
美しい「四季」の地に住めることに感謝。

キース・ジャレット、「イン・ユア・クワイエット・プレイス」
Keith Jarett,"In Your Quiet Place" (1975)

BY 講師T