アトリエ・マイルストンブログ

2015年9月15日火曜日

クリムトの淡白・風景画ー2

9月7日・曇り のち 雨
このブログは、9/15にアップしました。

「名作美術館(その135):クリムトの淡白風景画ー2」
当コーナー、前回に続き、クリムトの風景画を2作、紹介します。


今回も出典先に制作データの記述がなく、詳細は不明ですが、湖の名はアッターゼー湖と言う所らしいです。
前回作品同様、両作品共に正方形の変形キャンバスに点描を適宜使用した湖畔の住居が描かれています。
やはり実際の建物や木々は素材感があり、水面の光の反映はトロッとした滑らかな質感で妙味があります。
やはりまた前回作同様、建物に直角の面がありながら階調の差を控えて、敢えて平面的に描かれています。
手前(前景)に湖があるせいで、両作品の建物の住人は対岸の見る者を隔絶しているようにも感じられます。
画角の狭さがあたかも対岸遠くから望遠鏡を覗いているような感じで、部外者感がなおさら強まるようです。

名声を成した画家は人嫌いだったらしく、社交を避け、このような湖のほとりを好み、制作に没頭したとの事。
この2枚の美しい絵、画家の心のように、ある種の閉ざされた拒絶感を感じてしまうのは筆者だけでしょうか。
「美」と「隔絶」が同義語のように並列された美しい風景。かつて高級別荘地で味わった心の痛みのようです。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その163):夏去り曲」

今回のこのコーナーは、画家と同じくオーストリア繋がりです。
しかも同名で同時代に生まれ、ウイーンで名声を得、若くして当地で死没した大芸術家同士です。
画家の作品に感じられる耽美的な寂寥感が共通しているようで、BGMには適していると思います。

グスタブ・マーラー、交響曲 第5番、第4楽章、アダージェット、ピアノ編
編曲・2台のピアノによる演奏:天生目(あまなめ) 智(さとし)
(Composed by) Gustav Mahler , Symphony No.5, 4th.Movement
Piano Aranged And Performed by Satoshi Amaname (Recorded by Dubbing)

クリムト54歳、マーラー49歳、共に短すぎる生涯ですが、二人の残した足跡は偉大です。
人の命は短いものですが、作品は永遠に生き続け、後継者を産み、刺激し続けています。
その息吹が100年後の私たちにも届き、その100年後ですら、それは光り続けるのです。
目まぐるしく変貌する社会や時代に、過去の偉大な遺産を見直し、吸収し直すのも手です。

By 講師T