アトリエ・マイルストンブログ

2016年6月20日月曜日

明治の洋画ー9、松岡 寿

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「名作美術館(その176);明治の洋画ー9:松岡 寿(ひさし)の滞欧デッサン」

今回の当コーナーは洋画とは言っても油彩画ではなく、デッサンに絞って取り上げてみました。
まずは御覧になって下さい。
まるで昨日にでも描かれたような鮮鋭な幾何学形態のデッサン。シャープでクールな存在感と画面です。
これは我が国の画家志望の画学生が100年以上も前に、滞在中のイタリアで描いたデッサンです。
100年後の現代でも充分通用する類まれな秀作で、通用するどころか頂点とでも言える巧みさです。

「球と多角柱」

2点目の古代の遺物らしき「レリーフ断片」もまた同作者が描いたデッサンで、こちらもまた見事な描写力です。

左:「イタリーの田舎娘」       右:兵士?または警察官?

上2点は人物で、やはりその造形的描写力は秀逸で、カメラとは異なる面的な立体把握の表現が見事です。
これら4点のデッサンの作者の松岡寿は岡山藩士の子に生まれ、国内でイタリア人のフォンタネージに師事。
その後、1880年にイタリア・ローマに38歳で留学、上4点のデッサンはその頃に描いた作品と推測されます。

実は筆者・出身校が出版した画家の美しい素描集が欲しかったのですが、在学時は在庫切れで入手できず。
今回 是非紹介したくてネット上で検索したのですが、残念ながら画像に行き当たらず今回は断念しました。
画家のそれのらデッサンは時代や様式を超えて、若かりし筆者の網膜に強く焼き付き、今も色褪せません。

画家は帰国後、教育者としても活躍、東京高等工芸学校(現千葉大学工学部)の初代校長にも就任しました。
富国強兵・殖産興業で国力を増し欧米列強に肉薄せんとする明治人の気骨・気概が、絵画にも感じられます。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その208):雨歌(その2)」

今回の当コーナー、前回に続いての「雨」にちなんだボサノヴァの名曲です。
同曲、以前にもブラジル人のアストラッド・ジルベルトのオリジナル・ヴァージョンで取り上げました。
今回はアメリカ出身ながらイギリスはロンドンを拠点に世界的に活躍する気鋭のシンガーのカバーです。
間奏のテナー・サックスは夫君のジム・トムリンソンで、名匠スタン・ゲッツを彷彿させてくれる名演です。
しっとりとした気だるさ・甘ったるさが梅雨時の仄暗い日には似つかわしいような気がします。

ステイシー・ケント、「ジェントル・レイン」 (2010's)
Stacey Kent, "Gentle Rain",Composed by Luiz Bonfa (1965)

この曲、ボサノヴァの生まれたブラジルを超えて、アメリカでクール・ジャズと融合。後のフュージョンの先駆けです。
同曲、シンガーズ・アンリミテッド&オスカー・ピーターソン・トリオの共演キラメキ・ヴァージョンもチョーお勧めです。
筆者20代中盤の愛聴盤で、10代前半からロック・フリークだった筆者の好みが変質したことを自覚した1枚でした。
興味のある方はyoutubeにて、こちらもどうぞ。


終日雨の暗い日には開き直って何もせず、香でも焚いてシナモン・ティーとねっとりパネトーネでティー・タイム。
静かに侵み入る雨垂れをBGMに、お香のたゆとう紫煙の筋とその行く先をぼんやりと眺めて睡魔訪れを待つ。
そんな怠惰なまったり極楽タイムを日がな一日楽しんでみたいものですね。

By 講師T