アトリエ・マイルストンブログ

2016年6月27日月曜日

明治の洋画ー10、和田英作

月曜日・晴れ 夜雨

「名作美術館(その177):明治の洋画-10:和田英作の英気」

今回の当コーナー、ネット上の良質な画像に恵まれ、数点掲載することが出来ました。

下の夕暮れ時の渡し場のシーン、美術の教科書で記憶されている方もいると思います。
美しい夕日を背景に少年が川向うを凝視して、誰かの帰りを待っているような印象的な光景です。
背後には野良仕事を終えて家路に向かう農夫たちの姿、ドラマチックな構図が映画の1場面のようです。

「渡頭(ととう)の夕暮れ」(1897年)東京芸大美術館

こちらもまた美しい夕暮れ時を描いた作品で、老女の顔や姿が克明に描かれています。
手にするこうもり傘や腰の手ぬぐい等の小道具もリアルで、老婆の半生とその行く先を想像してしまいます。

「おうな(老女)」(1908年)、東京国立近代美術館

次の2作もまたドラマチックな場面が描かれています。
、「明け近し」の文机を前にした女性の背後からは、早朝の薄青い光が室内の燈明と絶妙に混在しています。
意中人への文をしたためようと奮闘していたのか、一睡だに出来なかったようなその表情は重く印象的です。
「思郷」もまた窓の外、遠くを見つめる日本髪・着物姿の女性で、背後の窓枠から察すると西洋館のようです。
両作共に光の方向などの設定や、女性の無表情とも言えるような眼差しが見る者の想像力を掻き立てます。

     「明け近し」                     「思郷」

下2点もまた光が美しい肖像画です。
「赤い燐寸」は友人をモデルにした絵で、背後の青い海と帽子が織りなす逆光気味の光が美しいです作品です。
こちらを凝視する力強い眼差しと武骨な手に、明るい外光に相応しい男性的なエネルギーが感じられます。
女性は広島は尾道出身の作家18歳の時の肖像画で、偶然出会ってモデルになってもらった作品との事。
こちらは拡散した柔和な室内光を画面の両側から微妙に当て、うら若き女性の生命感を演出しています。

     「赤い燐寸(マッチ)」           「横山美智子肖像画」(1913年)

画家の作品は一見写生的ながら良く練られた光や構図を用いており、その英気は見事と言う他ありません。


画家は肖像画や人物画のみならず、風景画にも情熱を注ぎ、富士山が描きたくて静岡県清水市に転居。
数多くの美しい富士の姿をその豊かな気象現象と共に描き上げて、当時から著名だったとの事です。
これは筆者の推測ですが、銭湯の壁面・背景画にも多大な影響を及ぼしているのではと思っています。

「三保の松原」

和田英作(1874年~1959年)
鹿児島出身の画家は同郷の黒田清輝の下、東京美術学校にて学び、卒制で「頭渡の夕暮れ」を描く。
後にドイツやフランスにも留学。パリ・ルーブルではミレーの「落穂拾い」等も模写したとの事。
帰国後は東京美術学校で教鞭を取り、教授・校長にも就任。文化功労者や文化勲章も受賞。
画家は黒田清輝の後継者として、明治時代における美術教育の中心的存在として活躍した。

画家の確かな技術に裏打ちされた穏健な画風は、後に出てきた急伸的な芸術様式の到来で埋没。
我が国にもフォービズムやキュ-ビズム、表現派等の大波が押し寄せ、写実画は時代遅れとされた。
しかし画家の感性・英気によるその作品は、その急進的な画風の画家たちの作品より新鮮に見えます。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その210)」

今回の当コーナー、前々回に登場したちあきなおみさんの曲を聞きたくて、もう1曲取り上げました。
この歌も当コーナーでは確か3度目で、筆者の中では前曲とペア的な存在で、脳裏で響いています。
暑くも寒くもない湿度高い日には、そのしっとり声や分厚いコーラスが筆者周囲を包む大気のようです。
吐息のようなエアー感 豊かな歌声、ご堪能下さい。

ちあきなおみ、「星影の小径」(1992年)、元唄:小畑 実(昭和25年)

ウクレレの軽やかながらも糸を引くようなシャッフル・リズムも良い感じで、梅雨時を快くしてくれます。
他の楽器編曲もお洒落で、透明感あるギターやマンドリンの奏でるトレモノ・オブリもまた快感です。

昭和歌謡で時折登場するアカシアの花、残念ながら筆者には馴染みなく、ニセアカシア等もあり、複雑。
加えてミモザ・アカシアと言う種類もあって、ミモザのことをアカシアと呼ぶこともあるようで、益々複雑。
そこでそのミモザ・アカシアの映像を拝借。開花期は種類によって異なり3月から6月までとの事です。

ギンヨウアカシア(ミモザアカシア)
かなり季節はずれになってしまいました(それともギリギリ?)。
「アカシアの雨がやむとき」の方が、この季節にまだ多少はフィットしていたのかもしれませんね。
やはり、ちあきの「雨に濡れた慕情」も名曲・名唱ですが、艶っぽ過ぎてこのコーナーでは一寸・・・。
「遠くなりにけり、昭和歌謡情緒」

「追記」

但し嬉しいことに筆者の若かりし時代を飾る「昭和歌謡」、今、世界的に愛好家が静かに激増中との事。
インターネット・SNS時代、youtube等の動画の全世界的配信で、新たな歌謡曲ファンが生まれています。
美しく親しみやすいメロディーに綺麗な言葉がワールドワイドに認知され、その愛好家が世界中に誕生。
由紀さおりさんは米国のジャズのビッグバンドに誘われて「1968」と言うアルバムを発表、大好評です。
ピンク・マルティーニと言うバンド名で検索すれば、往年の名曲の素晴らしい名唱名演が堪能できます。
筆者個人も60年代は和洋問わず、大好きな曲・歌手たちが目白押しで、こんな現象に目を細めています。
「遠くにありし昭和歌謡、世界の人々の心を捉えて今再び復活中」
(亡くなられた歌手・作詞作曲家も多いですが、)嬉しい限りです。

By 講師T