アトリエ・マイルストンブログ

2019年12月2日月曜日

冬訪れのウォ―ム・ジャズ

月曜日・冷雨
アトリエは臨時休業期間中

久々の病に伏せ、一人静寂に取り残され、その時空をしばしまどろみ、
混沌とした意識下にて、遠き日の記憶を蘇らせ、その遠きことを想う。

先週までの学童クラブの喧噪は消え、やれYouTuberだ・やれTikTokだのが消え失せ、
熱にうなされつつも彷徨うは、遥か遥か遠き遠き故郷での幼き日々の甘い記憶でした。

そんな半世紀以上も前のおぼろげな記憶の背景で流れ出でた数々の曲の中から一つだけ選んで、今回の特集としました。

「ミュージック・ギャラリー(その389)」
「冬訪れのウォーム・ジャズ : ミスティー三昧」


前回の
「晩秋冷雨のウォーム・ジャズ」
に続いての特集です。

今回は色々なミュージシャンが一つの曲を歌唱・演奏したカバー曲集です。
その曲の名は「ミスティー」、以前にも当コーナーにてボーカルやインスト物など、幾度か登場のお馴染み曲です。
当曲は「テンダリー」や「スターダスト」や「ブルーム―ン」等と並ぶ筆者の大好きなジャズ・スタンダード曲です。


まずトップバッター、ビリー・ホリデイやサラ・ヴォ―ンらと並び称される前世期の黒人女性ジャズ・シンガーの歌唱から。
2番目の動画と当曲がダブるのですが、当動画はその和訳にて歌詞の内容を知っていただきたくて、敢えて取り上げました。

「ミスティー」、エラ・フィッツジェラルド(英語詞・和訳付き)


想像に難くない切ない心を歌っているメロディアスなバラードですね。節々、結構意味不明ですが、大体みんなそんなものです。



次いで2番目をを飾るのは名うてのシンガーらの同曲・聴き比べと言うことで、その個性的な歌唱法・料理法、お聴きください。

「ミスティ (Misty)」聴き比べ、作曲:エロル・ガーナー、作詞:ジョニー・バーク

歌手:ジョニー・マティス、ジュリー・ロンドン、フランク・シナトラ、
アンディ・ウィリアムス、エラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン


男女共に片思い的な感情を上滑りせずに淡々と(そうでもない方もあり)歌い上げ味わい深く、それぞれの声と個性が快感です。
筆者の最も大好きなシンガーは、幼年時代以来の最もお馴染みで、2番手のジュリー・ロンドンです。しっとり感が堪りません。


詞の内容を重視したジャズ・ボーカルの次は、楽器演奏の醍醐味を加えたインスト物を堪能ください。

「ミスティー」、テナー・サックス演奏:スタン・ゲッツ
" Misty ", Tenor Saxophone by Stan Getz


Stan Getz: tenor saxophone
Bob Brookmeyer : valve trombone.
Herbie Hancock: piano Gary Burton: vibraphone Ron Carter: bass Elvin Jones: drums

マウスピースの傍から漏れ出でるエアーまでも自らの表現手段としてしまう演奏家の心意気が嬉しいですね。
一人二重奏みたいな欲張りな世界、琥珀色の透明な澱がグラスの中で静かに沈殿してゆき、やがて遠のき。
厳格なアカデミック&クラシックな演奏家・指導者なら、思わず顔をしかめてしまいそうなサウンド作りです。
何でもありのその世俗性こそジャズそのものであり、同時に所有の超俗こそまたジャズ演奏家の魂そのものです。
客演のB・ブルックマイヤーの楽器は、通常のスライドバー式ではなく、トランペット等に共通のピストン式です。



次は伝統的なトロンボーン使いの名手による名演です。

トロンボーン演奏:ジェイ・ジェイ・ジョンソン
" Misty ", Trombone by J J Jhonson

トロンボーンの持つダジャレのようなトローン&ヴォ―ンとした響き、現代では希少な空気感を大切にする世界です。
熱にうなされ病床にて当曲を聴いていると、筆者の身体の状況との共通性があり、ボーッとした空気感がマッチしてます。
特に最後のロングトーンが心地よく感じられました。



次のハーモニカ、演奏しているのは中年日本人男性のようで、淡々・切々とした上品な音色が快感です。

クロマチック・ハーモニカ演奏:マディー・八田
" Misty " harmonica by Muddy Hatta



ラウンジ・ピアノと言うジャンルを知らない方も多いかとは思いますが、演奏家はその代表格です。
米国ではホテルのラウンジ等で、利用客のためのBGMとして、バラード曲を中心に生演奏が供されています。
ピアノが主ですが、時にハモンド・オルガンやヴィブラフォン等も用いられ、談笑の雰囲気造りを行います。
動画の音源はドイツはミュンヘンでのライブだそうですが、その抒情や動画のミスティーな景色も秀逸です。

ピアノ演奏:ジョージ・シアリング
"Misty", Piano by George Shearing - (Live in 1992)

人々の談笑や靴音、女性バーテンダーの低い声、軽い乾杯のグラスの音・・・。
かつてのハリウッド映画や渡米時のホテルの静かな喧噪が蘇ってくるようです。
とは言え、最後部は酔いどれ千鳥足のようなブルージー表現で「ラプソディー・イン・ブルー」風も披露しています。



さて最後にオリジナルを世に送り出した御本人・エロール・ガーナ―による演奏をどうぞ。

Original " Misty ", Composed & Piano by Erroll Garner (1954)

一石を投じ、多くの演奏家や聴衆に愛され、時代を超えて奏でられる超名曲、作曲家自身もまた天国にて幸せでしょう。

* * *

「筆者・初インフル・ウィーク」

熱があり過ぎて寒気の走る週末でした。
今は自宅居間の明るく温かい空間で、意識混濁の酔っ払いのようにただひたすら時空にまどろんでいます。
ホット・レモネードあたりで冷え切った身体を温めて、せっせと往年のジャズやポップスに浸っています。
時折、目覚め、
インフル効果としての症状の鼻声を利用して、トニー・ベネット風に上のミスティーを口ずさんでいます。
( 下手は承知の上、誰に聴かす訳でなし・・・)
(#^.^#)

昭和も、5~60年代も「ミスティー」さながらに遠くになり・・・、
リアルにこの情緒を共有する同士もまた日毎に減りつつあり・・・。
悲しくもあり、上述情緒にご相伴預かった身が嬉しくもあり・・・。
日頃の健康に感謝しつつ、複雑な気持ちの病気療養週間です・・・。

By T講師
( 今回もまた熱うなされ乱文ながら、アップいたしました。ご了承ください。)
_(._.)_