アトリエ・マイルストンブログ

2015年3月2日月曜日

宮廷画家の定点観測絵

月曜日・晴れ
昨日とは異なり、春三月らしい温かな日となりました。
アトリエ定休日

「名作美術館(その112):宮廷画家の定点観測絵」

前回の当コーナーに続き、スペインを代表する大画家ベラスケスの珠玉の肖像画を取り上げました。
前回紹介した「ラス・メニーナス(女官たち)」の中央にいたのが、今回の主役・王女マルガリータです。

ラス・メニーナス制作年の1656年、マルガリータ王女5歳。

 「薔薇色の衣装のマルガリータ(1653年、2歳)」、ウイーン、美術史美術館

 幼女マルガリータ(1956年、5歳)     青いドレスの王女マルガリータ(1660年、9歳)

 赤いドレスのマルガリータ(1660年、9歳)

宮廷画家ベラスケスの描いた王女マルガリータの肖像画です。幼女の表情が見易いように外周をトリミングしてあります。
2歳の2枚の肖像画は、いわゆる写真の焼き増し(懐かしい単語です)プリントのようなものではないかと推測しています。
何故なら、肖像画は婚約者のレオポルド1世の元へ送られていたとのことで、どちらかが手元に残されたのだと思います。
画家は自由闊達な筆致で、幼女のあどけない表情や無垢な存在感を愛情深い温かな眼差しで画布に写し取っています。

そんな温かな筆致が後年19世紀の画家たちを魅了し、現代へと繋がる自由な近代絵画が誕生し、育っていくのです。
モネやマネ然り、ルノアールやドガもまた然り、画家の時代を超えた筆致が大きな花となって世界中に花開いたのです。

マルガリータは15歳で結婚・4人の子を設けますが、次女出産後に体調を崩し、21歳の若さでこの世を去りました。
この訃報に接して、マルガリータ王女をはじめ宮廷の人々を描き続けた画家の心境はいかばかりだったでしょうか。
その後、この偉大な宮廷画家もまた世を去りますが、国王夫妻に長く寵愛され、死後も手厚く葬られたとのことです。
21世紀の今日でも、マルガリータはこの天才画家の筆により、可愛い表情のまま、私達の眼前に存在しています。
400年も前の命の輝き・佇まいのまま・・・。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その138):春待ち歌」

今回の当コーナー、春に因んだ歌と言うことで、色々考えました。
で、選んだのがビートルズの名曲。歌詞に春はありませんが、春の暖かさを思わせる小鳥のさえずりも入っているし・・・。
しかも、昨日紹介のHTさんの新作・銅版画にも共通するし、加えてHTさんはビートルズ世代で大のファンでもあるし・・・。

でも最終的に選んだのは、投稿者の意訳付きのこのオーストリア在住の双子女性シンガーのバージョンとなりました。
youtube上で検索し歌詞をチェックした際、その内容が上記のマルガリータやベラスケスともダブって感じられたのです。
また王女の嫁ぎ先の神聖ローマ皇帝・大公レオポルド1世の居住地は、ハフスブルグ家本拠のオーストリア繋がりです。
王女として生まれ何不自由なく多くのケアを受けながらも、幼少の頃から一方的に結婚相手が決められる自由なき定め。
一介の地方画家から名誉ある宮廷画家に登用されながらも、官職のため、その生涯のほとんどを王宮内で過ごした画家。
抽象的ですが、そんなマルガリータやベラスケスの人生の綾をも含めての、この動画です。
では、どうぞ。

ブラック・バード/ モナリザ・ツインズ
Blackbird (The Beatles cover)/ Mona Lisa Twins

原曲はポール・マッカートニーの作品で、彼らの傑作2枚組LP[ホワイト・アルバム」の中ののどかな曲です。
しかし真の意図は、当時の米国での公民権運動に触発された人種や人権問題を婉曲的に表現した歌です。
40数年経った今でもなお色褪せることのない、20世紀最大の音楽家達が放った多数の傑作曲の一つです。
それが、今回の春待ち歌です。
日々の寒暖差こそありますが、紅白の梅が人里のあちこちで、ほころび始めました。
春間近な良い季節です(花粉症のHTさんや他の罹患の皆様、申しわけありません)。

By 講師T