アトリエ・マイルストンブログ

2016年11月7日月曜日

立冬の酒井抱一、秋草図

月曜日・晴れ・立冬

「名作美術館(その198):立冬特集:酒井抱一の秋草図」

以前、当コーナーで取り上げた作品の再登場です。
今回は時節柄、屏風左隻の秋草図に焦点を絞りました。

酒井抱一、「夏秋草図屏風」(重要文化財)、紙本銀地著色、1821年

今回の上作品、ご存じの方も多いと思いますが、下の尾形光琳の「風神雷神図」の裏に描かれた作品です。
右隻が夏の雷雨でしなだれる草花や水流、作隻が秋の冷たい風で揺らぐ草花や実などが描かれています。
裏面の琳派の先達・尾形光琳の「風神雷神図」の風雨(雷雨)に呼応して描かれた酒井抱一の代表作です。

上画面の裏:尾形光琳、「風神雷神図(俵谷宗達の模写」(重要文化財)

抱一は光琳の画面に呼応しながらも夜の情景を描き、画の背景にはその象徴としての銀箔を用いています。
強風に煽られて吹き飛ばされそうな秋の草花の描く曲線が美しく、風の音さえ聞こえてきそうなリアルさです。

屏風の左隻「秋草図」

下2点はその部分拡大図。淀みなく描かれた流麗な曲線の織りなすリズム感をご鑑賞下さい。
また蔦(青ブドウらしいです)の葉上の「垂らし込み技法」による紅葉の滲み具合も極上です。



洗練された洒脱な形象、わが国の伝統美術を代表する琳派の装飾的で風雅な「物の哀れ」世界。
ご堪能いただければ幸いです。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その238):秋冬・狭間歌」

この秋は秋らしさが平年より希薄だったようで何だか複雑な心境です。
爽やかで繊細な秋情緒を堪能する前に、早くも立冬を迎えてしまいました。
今回の当コーナー、筆者・若かりし頃の懐かしい歌を取り上げてみました。

紙ふうせん、「冬が来る前に」(1977年)

関西フォークの雄、5人組の「赤い鳥」が解散・分裂して出来たデュオ・グループの代表的ヒット曲です。
この「赤い鳥」は他にも、今ではスタンダードとなった感のある「翼をください」などの曲も出しています。
当曲もスタンダードとして、高校の音楽の教科書にも掲載され、合唱曲の定番にもなっているとの事。
この紙ふうせんは伝統的和風情緒を求め、分裂の他方は「ハイファイセット」としてポップス路線を追求。
こちらは都会的でクールな感覚で、「冷たい雨」や「卒業写真」「フィーリング」などをヒットさせました。
60年代から若者の間で定着したフォークが、ポップな要素を取り入れてニュー・ミュージックへと変化。
昨今のJポップへと繋がる流れの源流とも言える時代の代表的な楽曲、抒情的な旋律が秀逸です。

秋夜長、泳ぐ昔日・ユーチューブ
楽しくもあり、哀しくもあり。

By 講師T