アトリエ・マイルストンブログ

2019年11月4日月曜日

「文化の日」特集:その1

月曜日・晴れ
「文化の日」の振替え休日

「現代沖縄の伝統音楽文化」

昨日の「首里城燃ゆるー2」にての「沖縄音楽の宝:ビギン」に続き、少々の追加版を加えることにしました。
お付き合いをいただければ幸いです。
( 今回もまた高音質な音源を再現するために、外部スピーカーやヘッドフォーン接続にてお楽しみ下さい。)

「ミュージック・ギャラリー(その384):島人(シマンチュ)の宝(その2)」


筆者の故郷沖縄の音楽事情、本土に住む人々の想像を遥かに超えて濃密で、生活に密着して今なお盛んです。
そんな中から幾つかを選択するだけで骨の折れる作業で、あれもこれも良い、あの曲も良いけど動画がない、
そんな贅沢な悩みや葛藤があり、当コーナーに取り上げるまでにはそれ相当の取捨選択を経なければならず、
正に「沖縄音楽ルネッサンス」とでも呼べるような百花繚乱的な活況に、筆者の嬉しい悲鳴は続いています。

そんなワケで悩みに悩んだ末の選曲の第2弾をお届けします。
昨日(前回)の石垣島の出身のビギンの3名、その素朴な世界は 老若男女に支持され、今や海外でも評価されています。
そんな彼らを育んだのが石垣島で、
民謡や舞踊文化の濃い沖縄にあっても特にその濃度や密度が顕著で、多くの名曲や歌者(うたしゃ)たちを輩出しています。
その主だった理由、筆者の独断では、
戦後の米国の影響(基地)がなく、ゆえに派手な社交場も少なく、民謡が仲間内で歌い継がれ、またその背景として、
大自然との接点・交感による抒情的感性をより育んできたためではないかと、浅学で勝手な推測を加えてみました。
今回、取り上げる夏川りみも石垣島が育んだ歌姫で、その共演者も全国的にはまだ無名ながら、稀代の優れた音楽家です。
心に沁み入る二人の唄者の共演、これもまた沖縄の「宝」です。

新良幸人(あら ゆきと) 夏川りみ 、「ファムレウタ (子守唄)」ライブ


御二人の歌唱、言葉の説明など不要です。
作者・新良幸人さんの歌心溢れる指弾き三線も絶妙で、筆者的にはもっと音量が欲しかったです。
「ファムレウタ」は石垣島の方言で子守歌のことで、沖縄本島では「クヮムイウタ」と言います。



で、そのオリジナル・スタジオ録音盤もまた素晴らしいアレンジなので、続けてお送りします。

新良幸人、「ファムレウタ」オリジナル・バージョン、和訳付き


動画の解像力が不鮮明ながら、唄者のバックの海はおそらく彼の生まれ故郷・白保の海岸線だと思います。
筆者もかつて訪れたことのある白保の海中には、世界的にも貴重なアオサンゴの群落があり大変貴重です。
歌詞の「海の未来もまた白地の布のように人々の心がけにかかっている・・・」が、我々の胸に響きます。
自らを産み育ててくれた母の情愛のような海の存在と、その海の悠久の清らかさを願った雄大な世界です。



新良幸人さん、パーシャクラブと言うバンドを結成しており、沖縄の伝統音楽と欧米流のロックとも融合させています。
その代表曲、お聴きください。
以前、当ブログで紹介しましたエイサー集団の「昇龍祭太鼓」のPVでも使用された勇壮・華麗な楽曲です。
はらわたや内臓の奥底までにも響き渡る太鼓の低周波、とくとご堪能下さい。

パーシャクラブ、「七月節(シチグヮチブシ)」

ライブ風に仕上がったこの動画、共演者は沖縄中部を根城に活躍する「栄口青年会」の皆さんです。
以前紹介の「昇龍祭太鼓・の光溢れるPVとは趣が違い、闇夜の住宅街で踊るエイサー隊は幻想的で、
まるで黄泉の国(あの世)と現世とを繫ぐ霊媒師集団のようで、実際の演舞の雰囲気に近いものです。
イントロ等で流れる琉球笛も勇壮で、間奏の三線の旋律は歌心に溢れたとても完成度の高い作品です。



さて、新良幸人のエネルギー溢れる世界をもう1曲、お届けします。
但しフル・バージョンはYouTubeにはなく、ショート判ですが、お聴きください。
元気湧きあがり、漲ること請け合いです(#^.^#)。

(新良幸人と)パーシャクラブ、「五穀豊穣」(ちょっとだけよバージョン:筆者勝手に命名)

このハイテンション、凄いでしょ?
故郷沖縄では中年やらご老人らがとても元気でパワフルで、若者たちもタジタジになるほどエネルギーに満ち溢れています。
それはイタリア旅行の際にも感じた共通な印象で、ラテン気質特有と思われ、故郷もまたその特質に恵まれているようです。
たった一度しかない・やり直しの効かない人生を心ゆくまで堪能・享受する姿勢は大いに真似すべきで微笑ましい限りです。
(*^-^*)

***

以上は沖縄の伝統的音楽を自らの感性の切り口で結実させた作品群で、新民謡とでも呼べるのかもしれません。
次は、伝統音楽(と言っても戦後に誕生したフォーク・ミュージックみたいなもの)の楽曲を演奏しつつも、
自らの感性で沖縄民謡のスタンダード・ナンバーを、自ら料理した珠玉のライブ動画を2編、お届けします。
撮影期日が古く、画像・音質も共に不満足な動画ですが、その中に記録されたパフォーマンスは超絶品です。

「ヒヤミカチ節」、上間 綾乃、かりゆし音楽祭(長野県上田市に於けるライブ、2011)

「もうチョー・カッコイイ~ですね!」
大パワーの炸裂。彼女の炎の塊りのような演奏ぶりは、そこんじょそこら辺のプロ・ロック・ギタリストを雄に陵駕するものです。
あのエリック・クラプトンが在籍したブルース・ロックの覇者「クリーム」の「ローリン & タンブリン」をも彷彿とさせる名演です。
余談ですが、筆者の中高生時代に大きな影響を与えたクリームのドラマー、ジンジャー・ベイカーが先だって逝去されたとのことです。
その内、折を見てその追悼特集をするかもしれません。



同曲のカバー、2曲目を最後にいきます。
沖縄県石垣島出身の三線弾き語り"華菜枝"さんと、
宮城県仙台市出身の和太鼓の"美菜子"さんによる 北と南のコラボレーションが生み出す 和のユニット「菜菜星(ななほし)」のライブの様子です。


「ヒヤミカチ節」、菜菜星、東京・天王洲アイル、CANAL FESTIVAL ライブ,2017

こちらもまた「チョー・カッコイイですね~!」
イベントの観客(見物客)がまばらで残念ですが、そんなことにもめげじの彼女らの堂々とした演奏が素晴らしいですね。
華菜枝さんの美声と端正な三線の音(ね)、棟方志功の木版画のような東北美人の美菜子さんの迫力太鼓、出会ってますね~!
これらの沖縄音楽、このように県外や国外の人々をも惹きつけ、感性の混合(チャンプルー)が進行形にて形成されています。

「ヒヤミカチ節」について
太平洋戦争末期の沖縄の悲劇を知った米国在住の県出身者の実業家が故郷の再生を願って応援歌を作ったのがその始まりです。
曲名のヒヤミカチとは方言で「気合を入れて」みたいな言葉で、その詞の通りの復活が現実になり、今も広く愛されています。
歌詞は「ソレ、ソレ、ソレ・ソレ・ソレ!気合で立ち上がれー!」てな感じで、悲しみに打ちひしがれた民衆を鼓舞しています。

そんな沖縄、
アマチュアともプロとも区分不可な多くの若手音楽家たちが、日々生まれ続け(または消え)、人々の日常にて息づいています。
彼らの発する音楽には文字通りの音を楽しむ世界があり、その純粋な楽しさが奏者から観客の感性へと伝播させているのです。
そこに出世欲や名声欲などの野心はなく、その刹那に自らの命のビートを心地よく発散させ、今日も島々に鳴り響いています。
無名・有名を問わず、彼ら・彼女らの未来に幸多からんことをお祈り申し上げます。
「チバリヨ~!」



脈々と歌い継がれてきた故郷沖縄の伝統音楽、保存容器に入れることなく、時と共に、時代と共に、また一人一人の個性と共に、
歌われ変貌し、右肩下がりや自然消滅の道を辿ることなく、大きなパワーやエネルギーを内包し、今世紀の今日に至っています。
本土復帰後47年(筆者も歳を取るわけだ)、その脈動は未だ力強く、全国的・世界的に広がり、人々の胸や身体に息づいています。



今回の「現代沖縄の伝統音楽文化」特集をこれにて終了いたしますが、これらも実にほんの一部の音楽家たちであり、
YouTube上にはそれこそ多くの音楽家たちが自らの世界を発信しており、また折をみてお借りしたいと思っています。
沖縄音楽
15世紀イタリアで発祥したルネッサンス同様、古典(当時ではギリシャ文化再発見)を知り、個人の感性を尊重し、
これからも益々の発見と発展が期待できるものとして、その活況に筆者もまたこの歳で刺激を大いに貰っています。

乱筆・未推敲ながら、例によってP.C内での紛失危機を避けるために取りあえずアップしました。
お立ち寄りいただいた方、楽しんでいただいた方、お付き合いいただいた方、感謝申し上げます。
(*^-^*)
_(._.)_

By T講師

P.S:「文化の日」特集、後日続けてアップする予定です。
しかし取り上げたい事柄多く、迷いに迷い、またまた文化の日からは遥か遠くになるかもしれません。
その節はご容赦。