アトリエ・マイルストンブログ

2019年11月11日月曜日

「文化の日」特集:その3

月曜日、未明の雨、明けて 曇り
アトリエお休み日
今日は11月11日(!)。学童たちは口を揃えて「ポッキーの日」だとのこと。

相も変わらずの投稿遅延や時差、ご勘弁下さい。
_(._.)_

今年の初秋、長引いた残暑に覆い隠され、早 晩秋になっていることに自覚も無く、気がつけば寒さ感じる朝夕となっていました。
里や野の紅葉も例年になく遅く、最近になって何とか色づいてきました。

上古沢(左側)・森の里4丁目間のケヤキ並木

過去撮影の写真ながら、紅葉の進行具合はこんな感じです。

* * *

「ブログ冒頭のお断り」

超・久し振りの美術特集、図らずも長編となり、ゆえに長時間を要する特集となってしまいました。
筆者P.C内の紛失トラブル回避のため、未完・未推敲ながら、現時点にてアップさせていただきます。
失礼ながら、未記述部分などは、投稿後に加筆を施しつつ 随時完成に近づけてゆくつもりでいます。
ご了承・ご勘弁をお願いします。
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「文化の日」(大?)特集その3


「文化の日」と当ブログの過去の「名作美術館」とを合体させ、今回のニコイチ(二個一)大特集とさせていただきました。
昨今の音楽ブログ状態に、本来の美術アトリエ・ブログとしての面目や体裁や再認識をも託して以下を投稿いたしました。
しばしの間、お付き合いいただければ幸いです。

「名作美術館(その232):焼き直し総集編」

「日本美術:描線・曲線の魔術師たち」


以前、当ブログや「T講師コーナー」内の「名作美術館」にて特集、ご紹介した際の作品群からの選りすぐりです。
それぞれの時代を代表する数多の絵師たち、今回のテーマは我が国独特の線描表現にその焦点を当ててみました。

御承知のように我が国の美術の発祥は、大陸は中国をその根幹・発端としており、その後独特の発展を遂げました。
大陸由来の画数の多い漢字文化から、やがて我が国独特の画数の少ない曲線中心の平仮名が生まれ、定着しました。

以下は筆者の私感ですが・・・、
その影響下にて、従来の大陸の直接的影響を超えて、画風や主題の趣旨を異にする柔らかな大和絵が生まれました。
逆に言えば、もしも平仮名の出現がなかったのなら「大和絵」の柔らかな絵画もまた誕生しなかったかもしれません。
加えて我が国の風土全般に大いなる影響を与え続けている四季の存在もまた、重要な画題として発展してきました。
今回はそんな背景を基軸に自らの画風を確立し、その時々の権力者たちに重用された絵師たちの作品を紹介します。
とは言え、美術史的な観点は専門書や史家らに任せ、画を描く(過去形?)者としての視点から進めていくつもりです。
「いざ!」



下はそんな絵師と書家二人の生み出した我が国を代表する最も優れた美術品で、正に国家や人類の宝です。
今で言うところのコラボレーション(共同制作)の元祖版といったところでしょうか。分業ながら完璧です。
その速度感のある筆致の生み出すたおやかな形象は頂点とも言える洗練された世界で、その品格は絶品です。

書:本阿弥光悦(ほんあみこうえつ)、装飾:俵屋宗達(たわらやそうたつ)


装飾的(平面的)で、かつ簡素でありながらも極めてリアルで、それらの形象が織りなす時空は品格に満ちています。
書が読めないのが残念ですが(筆者、高校時代、古文や漢文が嫌いでした)、それらの美は充分に感動・堪能できます。
英語やフランス語等の音楽、何を言っているのか不明でも、楽器の一つとして聴けて充分に楽しめることと共通です。)


俵谷宗達・絵、本阿弥光悦・書、金銀泥四季草花下絵、古今集和歌巻、重要文化財、畑山記念館所蔵

琳派の開祖とも称され目される天才絵師・俵谷宗達の梅、その洗練された抒情空間に匹敵する世界は存在しません。
この梅の花々、何と木版のスタンプが使用されていて、その絵具の滲みやかすれが味わい深い空間を形成しています。
絵も書も素晴らしく、重文なんて権威ぶらないで、即刻 国宝指定にしていただきたい程の我が国を代表する至宝です。

以下も薄墨による垂らし込みや滲みを利用しつつ、軽快な筆致にて花々の軽やかさや繊細さ、その香しさまで表現しています。





シルエットの花が桔梗やつゆ草や他なのか筆者には判断不能ながら、その背景の茎や葉の線描の軽妙な洒脱さに感嘆します。

かつてアトリエ生徒さんの一人が、筆者所有のこれらの図版の画集を眺めたあと、
「フーン、何だか京都や奈良あたりの観光客向けの銘菓の包装紙みたいですね。」
そう言われれば確かにそんなイメージかもしれません。化粧箱の裏側には品質表示法のラベルが隅に貼られているような・・・。
そんな印象はあながち間違っているとも言えず、その形象や雰囲気が持つ洒脱さが、銘菓なりの品格を上げているのは事実です。
背景の簡潔清楚な「装飾画」も、重ねられた軽やかな「書」も、その品格は今世紀の今日でさえ近寄り難い芳醇な夢幻時空です。

「凄い!!!」の一言!
このセンスの見事さ・完璧さ、我が国の先人たち、(超!)畏るべし!!!


「俵屋宗達の風神雷神図」


下は我が国の古典美術を代表する「琳派(りんぱ)」の祖、俵屋宗達の超名作(国宝)です。

 俵屋宗達「国宝・風神雷神図・屏風」(17世紀前半)、建仁寺蔵、京都博物館に寄託

大画面の金箔地に大胆に描かれた品格ある風神雷神の姿がユーモラスで、その周囲の袋やタスキ等の曲線も絶品です。
筆者も金箔の上に絵を描いた経験が幾度かあり、西洋古典絵画の刻印テンペラ画、日本画模写の際にも使用しました。
表面が極めて滑らかな金箔の上では、おつゆ状になった絵具はその表面ではじかれて、しっかりとは線描できません。
平滑な金箔の上でしっかりと固着させるためには、濃度や密度の濃い膠が必須で、その結果 柔らかな線描が困難です。
しかも毛筆の線描にやり直しなど不可能で、襖絵や障壁画のような大画面ではなおさらで、その大胆さはもはや奇跡的です。
古典時代の絵師らは幼年の頃より丁稚奉公の弟子として入門、長年の修業を経てはじめて、そのような技巧を体得するのです。
それゆえに、現代の我々では到底 成し得ない神がかり的・超人的「線描の魔術師」たちが生まれ、日本美術の歴史を飾るのです。


「尾形光琳の(国宝)紅白梅図屏風」

 尾形光琳、「(国宝)紅白梅図」、MOA美術館
二曲一双、紙本金地着色、各156x172.2cm、18世紀(江戸時代)


金箔上に初春の寒空に屹立する鋭い梅の枝を描いて絶品です。正に全人類的な宝と言っても決して過言ではありません。
画面中央を占有する川の流れの銀箔が経年変化で腐食し、剥落しているのは残念ですが、それでもなお美しい曲線です。
幹や枝の織りなす速度感・リズム感溢れる線描。華麗に流麗に円弧を描く流水の大小の曲線、もはや絶対美の極致です。
我が国の伝統的な古典美術、その中でも特に傑出している本作品は世界中の美術家らに多大な影響を与え続けています。

武家が重宝した「狩野派」が男性的な力強さなら、「琳派」は平仮名のような女性的な柔らかい美しさに満ちています。
また琳派の優美な意匠は、絵画を超えて多種多様な工芸品や陶器等にも数多く用いられ、庶民の日常を豊かに彩ました。
「光琳梅」と呼ばれる梅の花を簡潔にシンボライズした可愛らしいデザインは広く親しまれ、永遠不滅なデザインです。

紅白の「光琳梅」。その素は俵屋宗達の木版スタンプです

加えてその美は遠く欧州にも飛び火、象徴主義の画家たちや、アール・デコ等の工芸芸術にも大きな影響を与えました。
現在、世界的に有名なエミール・ガレやドーム兄弟(ガラス工芸)などの高価な装飾品などにもその影響が節々に伺えます。

「長谷川等伯の(国宝)秋草図屏風絵二題」


下は安土桃山時代から江戸初期にかけて活躍した能登の国出身の立身出世の大絵師の作品です。

 国宝 「松に秋草図屏風」文禄元年(1592年頃)、京都・智積院(ちしゃくいん、東山区)


  国宝「楓図屏風」、文禄元年(1592年)、京都・智積院
共に文禄元年(安土桃山時代、1592年頃)

絢爛豪華にして華麗、但しそんな中にも花々の漲る生命の輝きと、その衰退も同時に感じられて、けだし玄妙です。

* * *

「江戸琳派、酒井抱一の世界」


次は「江戸琳派」の代表格・酒井抱一(ほういつ)の代表作にして傑作の登場です。
こちらもまた言葉の解説など一切不要なほどの洗練された圧倒的な曲線が見事です。

「秋草図屏風」(左隻)

当作品はこれまでのきらびやかな金箔に替わって、夜世界を表現する銀箔がその背景として用いられています。
強風に煽られる草々はまた生命の儚さをも表しているようです。来たるべき冬の足音の第一歩かもしれません。



シダの美しいシルエットと美しい円弧を描く草葉や茎、野暮臭い現代にはもはや失われた情緒と品格です。



  両作品とも酒井抱一(江戸琳派の代表的絵師)作の「秋草図屏風(いずれも部分図)」

* * *

上2点は 「萩など」、出典元に記述なく作者不明です。

四季それぞれの気象の変化に恵まれた我が国、そのバリエーション豊かな美しい変化が風物や暮らしに様々な影響を与え、

 * * *


 柴田是真(ゼシン)「秋月夜」(和室しつらえ工芸品、引き出しの表面絵)

地平線近くの大きな満月の中には、小さな秋の虫のシルエットも描き込まれています。
画面を構成する繊細で大胆な草々の曲線は魔術師ならではの絶妙なお宝ストロークです。
筆者注:画面中央部の木枠などは、筆者がパソコン上で加工を施し、省略してあります。


 菱田春草、「武蔵野」、明治時代(1899年)、富山近代美術館

「線描の魔術師たち」、そこに到達した絵師たちを育んだのは、厳しい修練と周囲の美しい自然だったのかもしれません。
そのたおやかな、その見事な、その華麗な、その円やかな描線は自然の摂理の曲線を際立たせ、自らの技巧を語りません。
されどその技巧は雄弁で、見る者に数多の感動や癒しや快感を与え、四季や自然界の美しさを私たちに再認識させてくれます。
この国の偉大なる先人たちは遥か遠くへと行ってしまいましたが、その精神や感性は長しえに受け継いでいきたいものです。

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「恥ずかしながらの蛇足:筆者の模写習作」

上述の絵師たちの線描魔術ぶりに少しでも近づきたく、下描きもせずにいきなり描いてみました。
眺めるのと、描くのとでは大違いです。その洗練された形象や筆運び、一朝一夕には到底 真似できるものではありません。

 筆者による古典絵画の下描き無しの即興自由模写(和紙にアクリル絵の具、2016年)

筆者によるアレンジ模写「21世紀の風人・雷人図」(和紙に金色スプレー、アクリル絵の具、2016年)

宗達の「風神雷神図」を基に地球を加え、現代風にアレンジを施しました(但し未完)。そのタイトルも「風人・雷人」。
ジンは神ではなく人として改名。二人の足元は雲ではなく排出ガスで、地球温暖化に消極的な大陸の二大首領としました。
地球左側洋上にフィリピンや斑点の南沙諸島等を描き込み、頂点・中央部には富士山の白いシルエットを加える予定です。
その完成、一体いつになることやら・・・。我ながら呆れかえっています(エッ、またもや年越しするつもりでは!?)。
(;^ω^)

* * * * *

「ミュージック・ギャラリー(その386):日本文化特集」


今回の「文化の日」特集に関連した動画をネット上よりお借りしました。
外国の方の目を通して捉えられた我が国の自然や風物、私たち自身にもまた新鮮に映ってしまいます。

そもそも写真やムービー、レンズを用いて光の現象を写し取っているので、誰が撮っても似たようなものが・・・、
と思っている人も多いようですが、ところがそうではなく、写す側の心や感性や視点が映像に同時に映し込まれます。

我が国の何気ない平凡な日常の光景や風物、そこに外国人観光客らの視点では新鮮な驚きで映り、編集されました。
そこに投影された彼ら外国人らの視点は興味深く、インパクトある映像となっています。
我が国の、いつもは無意識に見過ごしている「文化」、ご覧ください。

Japan: A Journey Between Tradition And Modernity

INCREDIBLE BEAUTY OF JAPAN/2015


WHERE TRADITION MEETS THE FUTURE

WHERE TRADITION MEETS THE FUTURE

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「天皇陛下、御即位パレード(御列の儀)、開催さる」

雲一つない素晴らしい秋の日本晴れの下、
昨日・日曜日(11/10)、台風被害を鑑み順延になっていた都内パレードが、大勢の国民の歓迎・祝意の中、めでたく執り行われました。
また前日に催された御即位を祝う国民祭典も感動的で、特に子役だったあの芦田愛菜ちゃんの和服姿とその言葉が素晴らしいものでした。
( 感動するところ、「そっちかい!?」と言うアイドル・グループ・ファンらの不満の声が聞こえてきそうですが、筆者的にはそうです。)
目を閉じて聞いていると、とても中学生(15歳)とは思えない品格と知性があった(筆者も全く同感)と各方面にて大絶賛されていました。
難問多く深く黒き暗雲立ち込める中、良き時代になることを祈るばかりです。

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取りあえずアップさせていただきました。
後ほど、完成させんがため、努力します。
どうぞよろしくお願いいたします。

By T講師
(;^ω^)

超久々の原点回帰、お楽しみいただけたのなら幸いです。

「お知らせ」
P.S. 前回のブログに後日 追加の動画をお借りしてアップしました。
地球の裏側で咲く沖縄音楽、よろしければ、ご覧になってください。



「後日追記:次回予告」

まだ確定ではありませんが、「文化の日」特集:その4を目論んでいます。
先日の「文化の日」から随分と遠くなりますが、今回で記し足りなかった事あり、その続編と言うことで・・・。
でも気が変わって得意の「有言不実行」に終わるかもしれませんが、取りあえず現時点での予定と言うことです。