アトリエ・マイルストンブログ

2019年11月18日月曜日

「文化の日」特集:その4

月曜日・晴れ(夜:強風雨)
アトリエお休み日

色づいてきた森の里・青山のイチョウ並木

イチョウの落ち葉の黄色に、温かな橙色のドウダンツツジが綺麗です。

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文化の日:特集その4

「マンガ・アニメの母、浮世絵」


今回も前回に続いてのニコイチ・焼き直し特集です。
よろしければ、以下 お付き合いください。
(^-^)

前回特集で、我が国の美術の最大の特徴であると言っても決して過言ではない「線描芸術」について言及しました。
彼ら、絵師を生業(なりわい)として生きてきた我が国の伝統的職人たちは、
「大和絵」の優雅で柔らかな曲線を駆使して、四季折々の美を表現した世界は華やかさと儚さを兼ね備えていました。
昔日の絵師たちは幼少の頃よりの厳しい修業の日々を経て高度な技術を身に着け、依頼者らの要求に応えてきました。
そんな中、江戸の町人たちの間で「浮世絵」と言う木版画が流行し、複製芸術としてのとして大規模な普及が行われ、
当時、庶民の間で人気だった「歌舞伎」の役者たちの肖像や、東海道の宿場町の図柄が販売され、親しまれました。


しかも、戦後、庶民生活に定着したこの文化は、国境を越えて、遥か海外にまでその影響を広げました。
19世紀、パリ万博が催された際、日本美術の絵画や工芸・浮世絵等が初めて紹介され、大反響を呼びました。
後に世界のあちらこちらで何度も繰り返される、いわゆる「ジャポニズム」の初めてのブームの幕開けです。
宗教画の写実絵画が中心の欧州に於いて、日本美術の装飾的・平面的絵画や浮世絵の明るい世界は驚愕ものでした。
その後、芸術の中心地となったパリをはじめ、日本美術がヨーロッパの国々に多大な刺激や影響を与えたのです。


それらの絵画や版画の発想・構図は、その当時より斬新で奇抜で壮大でドラマチックで、奇想天外なものでした。

前回特集でも登場の俵屋宗達、「国宝・風神雷神図・屏風」(17世紀)

本来は赤鬼・青鬼と同じ色なのですが、宗達が画面の色彩構成を考慮してか、雷神の色を白く表現しています。
雷神に関しては、我が国は古来より緑を「青」と表現しており、上図もその風習に準じているのかもしれません。
二人の神様の表情、ユーモラスでちっとも怖くはありませんが、何だかアニメ風のセリフは聞こえてきそうです。

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 礒田 湖龍斎(江戸中期の浮世絵師)、「秋野美人図(肉筆浮世絵)」


前回の「曲線の魔術師たち」での登場も考えましたが、ここではその抒情性や動きを主眼に、敢えて今回に加えました。
こちらはその装束からして「遊女」と推定されている女性で、その艶やかな動作と白い脚が新鮮な表現となっています。
派手な衣装を着た女性が思わぬ降雨に見舞われ、白い太ももも露わに慌てふためく様子を艶っぽく表現して見事です。
襦袢の緋色(赤)や足元の黒漆塗り下駄とその鼻緒の朱色などを対比させて、この女性の白き肌を強調していて妙味です。
前後の脈絡、それは見る者が自由に勝手に創り上げる醍醐味に溢れ、遠くの雷鳴や女性の声さえも聞こえてきそうです。

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下の迫力満点な絵、これはもう現代日本のアニメと言っても全く違和感のないダイナミック&ドラマチックな壮大さです。


歌川国芳、 「讃岐院眷属をして為朝をすくふ図」

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下は、言わずと知れた我が国が世界に誇る世界絵画史上の天才と目されている葛飾北斎の浮世絵木版画です。


葛飾北斎、富嶽三十六景、神奈川沖浪裏(浮世絵・版画)

そもそもタイトルからして奇抜です。波の裏を描こうなんて、しかも画面いっぱいに垂直にそそり立たせ、
砕け落ちる飛沫は龍や怪物群の手のようで、逆巻きながら三艘の小舟を今にも呑みこんでしまいそうです。
迫力満点な画面につい見落としがちですが、乗員ら全員が船べりにしがみつきながらゲボを吐きそうです。
波飛沫と雪帽子を被った富士、左側大波背後のせり上がる海面、北斎の世界はダイナミックそのものです。
また北斎はそれこそ「北斎漫画」と言う画集を出版。その中でありとあらゆる人物や森羅万象を描きました。
またフランス印象派の作曲家ドビュッシーは、この絵に触発されて交響曲「海(La Mer)」を書いたほどです。

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「写楽の役者絵:その表情のユーモア」


東洲斎写楽、「役者絵」、浮世絵・版画

個別の詳細は省きますが、御覧の通り、現代のアニメに通じる着想やビジュアルです。
しかも北斎や写楽は当時から庶民に人気があり、版画と言う複製文化を生み出しました。
現代で言うマス・コミュニケーション(大衆伝達)や、マス・プロダクション(大量生産)の元祖です。
「複数芸術」と言う意味においても、浮世絵は我が国のマンガ・ルネッサンスへと通ずる礎(いしづえ)です。

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「アニメの先駆者:鉄腕アトム誕生」


欧州に紹介・輸出された「浮世絵」は、当地の画家や芸術家らの「目から鱗」を落とし、多大な刺激を与えました。
一方の我が国は「文明開化」の流れと共に西洋美術の写実性に「目から鱗」を落とし、文化の交換が行われました。
「浮世絵」自体は明治以降 衰退の道を辿りましたが、その大衆的要素は漫画として脈々と受け継がれていきました。
 

大資本の巨大な米国ハリウッド製の大仕掛けの映画には、戦後の我が国では太刀打ちできるものではありませんでした。
SF物やその他の大掛かりな仕掛けの制作は予算的に無理で、その代わりの低賃金の人海戦術のアニメで対抗できました。
アニメの中では、特殊撮影も大掛かりな背景も自由に再現することが可能となり、実写を超えた世界を造りだせました。
アトムを世に送り出した手塚治虫は一躍 時代の寵児となり、国内に数多くの信奉者・追随者らを誕生・輩出させました。


「浮世絵」で培った物語性等が四百年の時を経て、戦後・初の国民的アニメとなって結実、一気に火が点いたのです。




わが国・初の本格的アニメ、ご存じ手塚治虫の名作「鉄腕アトム」、米国名「アストロ・ボーイ」。

筆者も幼少時代、夢中になってTV(その当時はモノクロ放映でした)に釘づけになりました。
「巨人・大鵬・卵焼き」が子供たちの人気の三種の神器の時代、アニメは「鉄腕アトム」と「鉄人28号」でした。
マーブル・チョコのオマケのアトム一家や登場人物たちのシール、勉強部屋中にそれこそベタベタ貼っていました。
「鉄腕アトム」はやがて輸出され、世界一の大国アメリカでは「アストロ・ボーイ」と改名、米国をも席巻しました。
ちなみに
今でこそ、原子力エネルギーの賛否を巡って様々な議論が戦われていますが、戦後すぐの頃には夢のエネルギーと言う認識でした。
その功罪や是非はさて置き、作者・手塚治虫がアトムに託した科学と人類の共存は、現代に於いてなお大きな克服・共存テーマです。

* * *


「百花繚乱、日本アニメ・ルネッサンス」


一度着火した小さな火は大きな炎となって国内に燃え広がり、それはやがて世界中に燃え広がりました。
先人たちの傑作・努力が結実、新たな花となって咲き誇り、世界中にそのマニアたちを生み出しました。
(海外旅行・渡航先のTVチャンネルをひねると、我が国発のアニメが各国で多数放映されていました。)
投稿画像、少々古めの作品ばかりですみません。
<(_ _)>





我が国の代表的なアニメ作家たちの名前は、今では国内では名だたる映画俳優などを超えて、
世界的にも有名な存在となり、各国でサイン会もあって、その人気や名声はうなぎ登りです。
「ハヤオ・ミヤザキ」や「アキラ・トリヤマ」らは、今や「アキラ・クロサワ」を超える存在です。
世界中の沢山の若者たちがそれこそ我が国のアニメ作品で幼少期を築き、ファンとなり増殖中です。
世は正にSNSの時代、放映の終了された旧作でも視聴可能で、多くの国々で鑑賞されています。


足早・手短に我が国アニメの誕生の背景としての伝統や継承を振り返ってみました。

我が国は「自動車」などのハードだけではなく、「アニメや漫画」と言うソフトをも日々 輸出しています。
「文化」とは私たちの日常生活に在り、魅力的なる存在ゆえに欲され、継承・発展するものだと思います。
世界中の人々の記憶や心の中にそれらは生き続け、新しいファンやフォロワーを今日も生み続けています。
それらが人々にとって魅力的な限り、未来永劫に渡ってファンやニーズは生まれ続けていくことでしょう。
我が国の日常が魅力的な限り、我が国の「アニメ」や「漫画」の未来もまた明るいのものとなるでしょう。

そこに進行形の活きた「文化」が生まれ(続け)ていくのです。
(やがては大人になってゆく)子供たちの目に心に、国境を越えて・・・

今回の2回目のニコイチ(二個一)特集、楽しんでいただけたのなら幸いです。

* * * * *

「ミュージック・ギャラリー(その387):アニソン 少々特集」


アニソン、今では一つの大きなジャンルとなり、それは世代や国境を越え、燃え広がっています。
「エヴァンゲリオン」「ワンピース」「けいおん」「ナルト」「一連のジブリ作品」等々、
それこそ数多くのアニメのテーマ・ソングが、数多くのミュージシャンにより産出されました。
そこでその特集を試みたものの、門外漢な筆者、その多くのツッコミ・ビートに閉口して断念。
ちなみに、
( 筆者の欧米系の知人・友人らも美しい旋律は良しとしつつも、そのビートは受容不可との事)

ここは筆者の好みで、YouTube上より久石譲氏の紡いだ癒し系の名曲集をお借りしてきました。
動画、多くの作集がありそのほとんどが長尺物で、今回は比較的身近な尺のもののご紹介です。
ちょっとした気分転換や息抜きの際のBGMとしてお楽しみ下さい。

Relaxing Harp Studio Ghibli Collection リラクシング・ハープ音楽 - スタジオジブリ:宮崎駿 【BGM】




★ スタジオ・ジブリ、チェロ・コレクション、Studio Ghibli Cello Collection


美しい旋律や音色、秋深まりのこの季節にはピッタリですね。
ほかにも色々取り上げたい動画あり、後日追加あるかもしれません。
取りあえず・・・

* * *

「追加版」

オリジナルの井上あすみさんバージョンが最も好きですが、この人のこの動画も・・・
初聴取時、間奏のバイオリンの音と旋律とその所作に、瞬時にノックアウトされました。
以前は動画にブロックが施されていましたが、ここ最近 解除されたようなので・・・
( 筆者注:画面内、線上の「YouTubeで見る」をクリックの上、御覧になって下さい。)

「君をのせて」(作詞:宮崎駿、作曲:久石譲、英語訳詞:Arvin Homa Aya)、「天空の城ラピュタ」主題歌


サラ・オレイン(Sarah Àlainn)、スタジオ・ライブ(2016)


* * *

以下は久石譲氏以外の筆者の好きなアニソンを更に追加しました。

secret base ~君がくれたもの~、/ ZONE (2001)、(10 Years after Ver.)  中文歌詞付


このアニメ、実は見てはいないのですが、この曲は昭和の雰囲気もあってお気に入りです。
7年前、学童クラブの初カラオケ大会で、現・中2女子のIrちゃんが歌ったので知りました。
時間外延長にて我が家に来た時には、いつも動画を再生しながら練習していて覚えました。
一言、名曲。



好きなアニソンと言えば、筆者的にはこれを出さない訳にはいかないでしょう。
当コーナー、3度目の登場です。
アニメ、こちらはDVD購入にて拝見。ストーリーと時系列が少々込入っていて、クラブの学童たちには不評気味でした。
(;^ω^)

「デイ・ドリーム・ビリーバー」、歌:高畑充希(森川ここね役)

PV映像/映画『ひるね姫』主題歌


こちらもまた けだし名曲、名編曲、名歌唱。



「最終追加は、この1曲で!」

前置き 長くなりますが、興味のある方はお付き合い下さい。

純然たるアニソンとは違うのかも知れません。
でも、主題歌に抜擢されるだけのことはある内容の詞の名曲です。
モチーフこそ飛行機雲とロマンチックですが、そのテーマは死です。

投稿コメント欄にもありましたが、「神風特攻隊」の若者たちを想起する方々も多いかも・・・。
遠き昔、南太平洋上にて消息を絶った女性飛行冒険家アメリア・イヤハートを連想する方も・・・。
でも白紙のままで聴いても、それぞれの人生のシチュエーションで聴いても素晴らしい名楽曲です。

以下は筆者の「脱線昔話」です。内容は歌手・荒井由実さんについてです。
恥ずかしながら告白すれば、この歌が出たその当時(筆者20代前~中半)、
筆者と同世代だったがゆえに、ヤッカミやらにて反発ばかりしていました。
美校時代の当時、中央線やその沿線のライブハウスで幾度か遭遇しました。
予備校友だちやバンド仲間の何人かも彼女と同じ学校にも通っていました。
筆者、友人らとバンドを組んで、福生の米軍ハウスで練習をしていました。
ちなみに、故・大瀧詠一氏のスタジオ兼自宅も米軍ハウスで、近所でした。
ある日のこと。仲間の一人がパチンコ屋で景品として獲ってきたと言うシングル盤をステレオでかけました。
広い室内に鳴り響く初めての日本語の歌、その時はみんなで異口同音に彼女のその歌声をけなしたものです。
( そのくせ、黒人フォーク・ブルースのはずれ声には味があると容認。全くのダブル・スタンダードでした。)
でも、みんなで泊まった翌朝のこと、
仲間の一人がそれをターンテーブルに乗せて再度の再現に挑み、その歌が朝の冷たい空気を静かに震わせました。
前日はあんなに反発して、ボロクソでケンモホロロだったのに、その時はもう誰もが無言で聞き入っていました。

早400回近くにもなろうとするこのコーナー、まさか彼女のこの歌が登場するとは夢にも思っていませんでした。
彼女の独特の歌声もさることながら、ロック狂いで邦楽嫌いだった筆者らを黙らせた松任谷正孝の編曲も宝です。
あの日から 早40年。
レコードをかけた友も若くして逝ってしまいました。積年を経て素直になれた自身にも我ながら驚いています。
歳はとってみるものです。
更に私事続きで恐縮ですが、
青春の一時期の苦楽を共にした同年・同級生のその彼、故・関雅人君にこの曲を捧げたいと思います。享年27歳。
高校時代に世界中を2年もかけて旅した彼、最も最後まで生き残るであろうと皆で主張・予言していたのに・・・

荒井 由実(作詞・作曲・歌)、「ひこうき雲」(1973年)、宮崎駿「風立ちぬ」主題歌

後記:上動画(オリジナル音源)、今年年末までの期間限定でしたが、早々に削除されてしまいました。
他の御本人生歌唱や歌うま人のカバー等での差し替えも考えましたが、編曲を含め余人では不可でした。

アニメの方は、宮崎駿氏の美学・人生観の集大成とでも言える個人的作品でした。

上の「デイドリーム」日本語バージョンを歌った故・忌野清志郎もまた同世代。
彼のライブも日比谷の野音で幾度か経験しました。筆者もそう長くはありません。
遅ればせながら今こそこの曲、名歌詞・名作曲・名編曲・名歌唱だと断言します。
この機会を得たことに感謝です。
特集テーマのアニメからは随分と離れてしまいました。ご勘弁。
<(_ _)>

晩秋の日の「アニソン少々」、楽しんでいただけたのなら幸いです。
(*^-^*)

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「アトリエ近況報告:MOA美術館・児童画展・厚木、開催さる」

今年も恒例の児童画展が、厚木文化会館で催されました(11/16~17)。
市内小学校(展覧会参加校)の学童たちの力作・秀作・傑作が一堂に会し、圧巻の展示内容でした。
当アトリエや当学童クラブからも多数の学童ら作品が入選し、夏休み以来の再会を果たしました。
筆者、この児童画展が大好きで、小学生たちの生み出した「一期一会」の傑作にいつも感動です。
彼らの瑞々しい感性とその素直な表現力の数々に、毎年大きなパワーと元気を貰い受けています。
「宝物(御本人らにその自覚はありません)」たちに大感謝です。

今回も300点ほどを撮影させていただきましたが、当ブログにて公開できないのが悔やまれます。
いつの日か、飾れることを・・・
_(._.)_


「厚木あゆ祭り・応募絵展にてNKちゃんが最優秀賞・受賞」

また加えて、学童クラブ・メンバーのNKちゃん(小6)が、あゆ祭りの花火の絵で最優秀賞に選ばれました。
全市内の小学校から選ばれた秀作群の中で、その頂点に立ったことは指導した筆者としても嬉しい限りです。
NKちゃん、夏休み中の夏期講習など多忙な時間の中、熱い情熱で迫力満点でリアルな画面を描き出しました。
昨年も優秀賞に輝いているNKちゃんの傑作作品、当ブログにてお見せできないのが重ね重ねにも残念です。
( ;∀;)

その代わりの宝物として、NKちゃんが小2の頃に描いたネコちゃんの絵を紹介します。


その年の大晦日を飾る絵に選んだ作品の1点で、この可愛らしさは今もなお輝き続けています。
ご両親、大切に保管していることと思います。
「NKちゃん、受賞おめでとう!」

* * *

「アトリエお休み日のお知らせ」

今週末11/23(土)の「勤労感謝の日」から25日(月)までの3日間、アトリエはお休みです。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

By T講師
朝夕の寒暖差が激しい時節、ご自愛しつつ「小春日和」の暖かなポカポカ陽気を楽しみましょう。