アトリエ・マイルストンブログ

2016年5月23日月曜日

明治の洋画ー6、青木 繁

月曜日・晴れ・全国的に真夏日が続出
本格的な夏の到来のようで、大気中の水分多く空も白く霞んでいました。
アトリエ定休日

「名作美術館(その173):明治の洋画(その6):青木繁の人体描写と光」
青木繁1882年(明治15年)福岡県久留米市生まれ~1911年(明治44年)若干28歳にて夭折。 

青木繁、満を持しての登場です。
日本の神話を題材にしたロマン主義的絵画で、裸の漁師たちが獲物を持つあの「海の幸」が代表作です。
教科書でもお馴染みの超有名作品でご存じの方も多いと思いますので、当コーナーでは取り上げません。
実は筆者、今回青木繁を取り上げたにもかかわらず、実はどこからどう進めて良いのやら当惑しています。
画家が愛読し、画題とした古事記等の神話には浅学。その代わりのエピソードはあまりにも多過ぎます。
同郷で共に上京した友が坂本繁次郎だったり、絵のモデルが恋人でその二人の子が福田蘭堂だったり。

画家のその短すぎる波乱万丈の半生を記すとなると、紙(画)面が幾らあっても足りません。
そこで、絵に限って言及することにしました。
もう御覧の通りの素晴らしい作品揃いです。
画家は生来のデッサン力で画面をドラマチックかつ強固に構築。西洋美術の規範の様式も難なく吸収。
画家は当時西洋で興った耽美主義の英国ラファエル前派の画風をいち早く取り入れ、東洋文化と融合。

短い生涯の数少ない作品には人物の表情や、人体の美しい典雅なフォルムやムーブメントも表現。
西洋美術の神髄であるギリシャ由来のコントラポストやルネッサンス由来の前縮法も消化しています。

「大穴年知命(オオナムチノみこと)」
仰向けの男性(尊・みこと)の前縮法を用いた肉体表現が見事です。
右の女性のモデルが、やはり画家であった恋人の福田たねと言われています。

「わだつみのいろこの宮」1907年(右はその部分図)、重要文化財

英国のエドワード・バーン・ジョーンズやフランスのギュスターブ・モローらの影響を自認していたとの事。
上の山幸彦の脚の前縮法や、左の女性(海の姫君?)の顔の下方からの反射光の表現が見事です。
水瓶を持つ右の女性の手の表情も素晴らしいですね。

「ヤマトタケルのみこと」          「温泉」
ギリシャ彫刻のような見事なコントラポスト(片足重心)が美しいムーブメントを造っています。

「森の夕」

「輪転」

「享楽」
神話を題材にした作品。優美な色彩、劇的な逆光表現、人体姿態がいずれも典雅で美しいです。

左:画家自画像     右:恋人、福田たね

放浪の旅の途中、肺結核が悪化して28歳で黄泉の国へと旅立った青木繁。明治時代きっての天才です。
今生では夫婦になれなかった二人の画家・青木繁と福田たね、その代わりに美しい作品を残してくれました。

* * *

「ミュージック・ギャラリー(その204)」

今日の当コーナーは青木繁の出身地福岡繋がりで、原曲歌手が同じ久留米の松田聖子、
今回のヴァージョンは、同じく福岡は春日市在住の女性歌手の清楚な歌声で紹介します。
その一人二重奏のようなエアー・ボイス、癒されます。

「瑠璃色の地球」、歌:手嶌(てしま)葵(あおい)

瑠璃色、群青色、ウルトラマリン、ラピスラズリ・・・。
紫味、もしくは赤味のある寒色系のブルー、筆者の大好きな色です。
テレビ、パソコン、絵具、ペンキ、看板・・・、巷や日常に色彩溢れども、なかなか出会えない色の一つです。
南米の熱帯密林に舞うモルフォ蝶やアメジストの原石などに見られる、きらめき輝く光のような色。
画家フェルメールが好んで用いた色、NASA撮影の我が星・地球も確かに瑠璃色に輝いています。


気温高くも、風吹き渡り快感。
されど先走ることなかれ、夏。
梅雨もまた留まれ、南の海へ。
しばし、薫風時を楽しみたく。

By 講師T