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「名作美術館(その171):明治の洋画(その4):山本芳翠のフェミニン絵画」
「名作美術館(その171):明治の洋画(その4):山本芳翠のフェミニン絵画」
「西洋夫人像」1882年(明治15年)、板に油彩、41x33cm、東京芸大美術館蔵
山本芳翠(やまもとほうすい)1850年(嘉永3年)生~1906年(明治39年没)、本名は為蔵。
岐阜県恵那市出身、横浜にて五姓田芳柳(画家・五姓田義松の父)門下・師事、画号を授かる。
1878年渡仏、パリで新古典主義を学び大量の模写を行うが、船便が沈没し作品の全てを失う。
パリ滞在中には法律にて留学中だった(前回登場の)黒田清輝に画家への転向を勧めている。
1888年に帰国。画塾を主宰、教え子には(初回登場の)藤島武二らがいたとのこと。
のちに美術団体も設立、その中には(前々回登場の)原田直次郎らも在籍していた。
上の「西洋夫人像」は留学中の作品で、モデルは女流作家のジュディット・ゴーティエと言われています。
その美しさは格別で、柔らかな頭髪、理知的な容貌、透明感のある肌合い、美しい筆触の輝く衣装等々。
江戸生まれの東洋の画家が維新後10数年足らずで、このような西洋的美しさを具現化したことは驚きです。
「若い娘の肖像」 「灯を持つ女」
「眠れる女」 「月下の裸婦」
「浦島図」
他の作品も御覧のように女性の美しさを発想豊かに表現していて、画家の類まれな才能が感じられます。
下の「浦島図」などは、玉手箱を手にウミガメに乗る主人公の浦島太郎ですら女性的に描かれています。
鉄道はおろか、電気・水道なども不十分な時代に、ましてや書店や画材店など稀有な状況下に於いて、
画家の感性が捉えた女性たちの持つ妖艶でたおやかでフェミニンな美意識、時代を軽く超越しています。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その202):春爛漫歌(その4)」
今回の当コーナーは春爛漫歌と共に、上記作品と同様に柔らかな「フェミニン」繋がりとなりました。
上の山本芳翠作品を見ていると、そのたおやかな形象にこのゆったりとした調べが現れ出でました。
西洋の音楽と楽器で、どこまでも東洋の香りを感じさせる空間が芳翠作品に共通していると思います。
川合郁子、ジュピター( ホルスト作曲、組曲”惑星”より )
糸を引くようなポルタメントのかかったボウイング・グリッサンドが中国の二胡のようでもあり、個性的です。
間奏で流れるコブシの効いた尺八もまた神秘的・宇宙的で、バイオリンの調べを更に引き立てています。入梅までの澄み渡った青空・夜空を見上げ、幼き日の故郷の「天の川」の輝きに想いを馳せるのも良いかも。
ちなみに故郷の南島では「天の川」のことを、同じ意味で「ティンガーラ」と呼びます。
こちらの方が音感的に硬質で、星々の輝きやきらめきにも呼応している気がします。
余談ついでながら、「浦島太郎」の浦島も「うるま(サンゴ)島」が由来との説もあります。
その故郷もそろそろ入梅時。その一月後にはこちらが入梅に。
しばしの薫風を思い切り深呼吸する日々にしたいと思います。
By 講師T