水曜日
「名作美術館(その181):明治の洋画-14:最終回・総集編」
当コーナー、明治時代の洋画家たち13名を急ぎ足で紹介してきました。
その生い立ちや位置付け等、専門の美術史家に譲ることにして、筆者の独断的好みと偏見で進めました。
小学校の図工や中学校の美術の教科書で出会った洋画家たちの代表作、今も目に焼き付いています。
ですが、
残念ながらそれら原画の多くとは出合ってはいません。実物を見ると、また違った感想を持つと思います。
美術の教科書をはじめ、ウェブ上の画像もまた実物の絵画とは違う存在であることを忘れてはいけません。
大量複製文明の私たちの日常は、多かれ少なかれ実物を知らずに、さも知ったような気で過ごしています。
情報もまた同様で、「上意下達」のような価値判断が当然のようになり、自らの目や考えは持ち得ません。
筆者もまた限られた情報と原画映像で知ったような気になり、筆者なりの好みを求めて筆を進めてきました。
しかし、そんなある日、ふと気がつきました。
ネット上で好みの作品画像に遭遇、ところが画質が劣悪で使用には堪えません。しかも情報も不明確です。
有名な画家やその作品はどこにでも溢れているのに、無名な画家の作品画像に出合える機会は稀有です。
インターネットで情報が氾濫する今日に於いてさえ、良い(好みの)作品に遭遇するのは至難の業なのです。
美術史もまた同様に最大公約数で記された情報だけが生き残り増大し、他は消去され闇に消えていきます。
鎖国の江戸時代に洋画と遭遇し衝撃を受け、その技術の習得に人生の全てを賭けた高橋由一や司馬江漢。
そんな彼らに触発されてその後に続いた志高き幸運な人々が、文明開化直後の西洋諸国へと海路渡りました。
法学を志すも画家となって大成を成し、組織を結成・君臨し、画壇や官学ピラミッドの頂点に立った黒田清輝。
明治も初頭、経済的にも負担が大きい時代に意を決して洋行を果たせた人々は一握りの裕福な人達です。
高い志を以った幸運な人々はその情熱で油絵やデッサンの勉学に勤しみ、期待に胸膨らませ帰国しました。
写真すら稀有な時代、その写実に迫る高い技術はしかし帰国後の画家に旧派とのレッテルが貼られました。
「影が茶褐色に見える画家(旧派)は才能が無く、影が紫色に見える画家(外光派)のみが才能があるのだ。」
そんな愚かしい暴言がまことしやかに流布・喧伝され、我田引水の非論理がまかり通った時代でもあるのです。
「外光派」と自らを称した大派閥が、写実画家の命運を時代遅れの画家と掃き捨て、隅へと追いやるのです。
それが全てと言う訳ではありませんが、画家もまた政治的な思惑で翻弄され、徒党を組み集団化しました。
そんな中で評価を下げた、或いは得られなかった画家や作品が、人目に付くことなく闇へ消えていきました。
かくて我が国の洋画の画壇や教育界や美術史は、大正~昭和へと引き継がれて、この現代に至るのです。
我が国の洋画誕生から百数十年・・・。
既成の定説や評価に束縛されない新たな発見・復権がある柔軟な時代になってもらいたいと願っています。
一度は忘れ去られながらも、鮮やかに蘇ったフェルメールや伊藤若冲のように・・・。
または海外での正当な評価で、生きがいを見いだせた版画家・吉田博のように・・・。
岩橋教章、「鴨の静物」、明治8年(1875年)
五姓田義松、「操(あやつり)芝居」、明治16年(1883年)
五姓田義松、「土佐丸」、明治29年
和田三造、「南風」、明治40年(1907年)
和田三造は以前にも当コーナーで紹介済みですが、筆者が感じる「明治の洋画」の第一に出てくる作品です。
明治も深まり、やがて「富国強兵」「殖産興業」で、海外へと向かう海洋国家の未来を暗示しているかのようでも・・・。
筆者の10代以来の「明治名画」のシンボル、今回の特集の締めくくりとさせていただきました。
乱文長文、失礼。
*
明治以降の国内の画家たちの作品、今後も折をみて散発的に取り上げていくつもりです。
その際もまたお付き合いいただければ幸いです。ご観覧いただき、ありがとうございました。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その216)」
今回の当コーナーは「夏唄」ではありません。
上の文章をしたためていた時に、筆者の脳裏にふと浮かんだ中島みゆきの名曲です。
但し残念ながら、御大・中島みゆきのオリジナルはyoutube上にはなく、このカバー曲を選びました。
時代と過去の闇間へと消えていった無名画家たちへのレクイエム(鎮魂歌)として浮かび上がりました。
豊かな感性と才能がありながらも力の論理で活躍できず、闇間へと葬られた人々に想いを馳せて・・・。
「時代」、歌:岩崎宏美、作詞作曲・原曲:中島みゆき
けだし名曲・名編曲・名唱です。
By 講師T
和田三造は以前にも当コーナーで紹介済みですが、筆者が感じる「明治の洋画」の第一に出てくる作品です。
明治も深まり、やがて「富国強兵」「殖産興業」で、海外へと向かう海洋国家の未来を暗示しているかのようでも・・・。
筆者の10代以来の「明治名画」のシンボル、今回の特集の締めくくりとさせていただきました。
乱文長文、失礼。
*
明治以降の国内の画家たちの作品、今後も折をみて散発的に取り上げていくつもりです。
その際もまたお付き合いいただければ幸いです。ご観覧いただき、ありがとうございました。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その216)」
今回の当コーナーは「夏唄」ではありません。
上の文章をしたためていた時に、筆者の脳裏にふと浮かんだ中島みゆきの名曲です。
但し残念ながら、御大・中島みゆきのオリジナルはyoutube上にはなく、このカバー曲を選びました。
時代と過去の闇間へと消えていった無名画家たちへのレクイエム(鎮魂歌)として浮かび上がりました。
豊かな感性と才能がありながらも力の論理で活躍できず、闇間へと葬られた人々に想いを馳せて・・・。
「時代」、歌:岩崎宏美、作詞作曲・原曲:中島みゆき
後記:当動画、削除されてしまいました。youtube上では今もご覧になれます。
興味ある方は、お手数ですが是非ご覧(お聞き)ください。名唱です。
浪人時代、故郷の親友からパチンコで獲った景品と言う彼女のデビュー・シングル盤を貰ったことがあります。
その親友は一粒種を残し30半ばで逝ってしまいましたが、彼女の伸びやかで艶のある歌声、いまだ健在です。けだし名曲・名編曲・名唱です。
By 講師T