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「名作美術館(その202):ワイエスの白い冬」
アンドリュー・ワイエス、前々回に続いての登場です。
テンペラ絵具や水彩絵具を用いて独特の世界を描いたワイエス。
画家の雪の白さは印象深き輝きや細やかさに満ちていて、写真では表せぬ心象のリアルさを有しています。
また画家は、生活の周りの建築物や室内の木造の壁に塗られた白色塗料にも特別な感情を寄せています。
今回の作品もまた正方形の画面に、一見無機的な存在に見える室内の一部をそれこそ淡々と描いています。
壁には忘れ去られたようなチープな金属製ハンガーが掛けられ、窓の下のベンチには光が張り付いています。
部分を大胆に切り取られた窓枠の外には薄曇が広がり、その下に僅かに遠景の緑が帯状に垣間見えます。
建物はビーチ・ハウスなのか・・・。
そして、その外には冬の海が・・・。
人恋しさ漂う白一面の無機的世界です。
建物はビーチ・ハウスなのか・・・。
そして、その外には冬の海が・・・。
人恋しさ漂う白一面の無機的世界です。
アンドリュー・ワイエス、「季節外れの海」
Andrew Wyeth, " Off at Sea ",1972, Tempera on Panel, 86 x 86cm
人影もなく、人の気配もなく、かつて賑わったであろう室内に光が差し込み、ベンチの座面を微かに温めます。
画題の「海」はその片鱗さえなく、見る者にその気配と季節とを暗示させ、想像の海へと引きずり込むのです。
画家の描いた白い冬、正に「チラリズム」と「妄想世界」の融合そのものです。
* * *
「寸感: 季節外れの海(筆者による番外編)」
筆者・若かりし高校時代のとある冬の日、かつて中学時代に遊んだ海上ボートハウスを訪ねたことがあります。
常夏の南島とは言え、冬はミーニシと言う北西からの季節風が吹き、その体感温度は寒く感じられたものです。
大きな白波が押し寄せる海岸やハウスに人影はなく、桟橋部分を撤去されたハウスは海に浮かぶ孤島と化し、
かつて若者たちの姿と喧噪で賑わったデッキの上には、無数のボートたちが裏返しで並べられていました。
細かな波しぶきを被ったボートの普段は見ることのない白い腹には無数の飛沫が張り付き、ミゾレのようです。
その一群の中の剥がれかけた塗装の中に、見慣れ親しんだお気に入りの数字を発見、思い出が蘇りました。
( この手漕ぎボート、全て同型なのに、その重さ・重心・直進性など、個性やバランスの違いがありました。)
その思い出とは真反対の冷たい強風が筆者の顔面や両耳を襲い、同時に急速に体温を奪い始めました。
幾重もの白波と青緑色の海の断面がボートたちの横たわる孤島を襲う中、筆者は旧友宅へと急ぎました。
冷たい「冬」は嫌いでした。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その245):冬・初出会い」
今回の当コーナー、上の絵の製作年・同時代と、白い冬を繫げてみました。
製作年の1972年は故郷が祖国復帰を果たした年で、筆者がパスポートを携えて上京した年でもあります。
筆者、高校卒業後に上京。初めての衝撃的な美し過ぎる秋に出会い、その続きの初めての冬にも遭遇。
浪人の身に、冬はやはり身にも心にも厳しく辛い時もありましたが、そんな頃に出会った冬情緒の唄です。
北海道出身のフォーク・デュオ、ふきのとうのデビュー曲、懐かしさ溢れる秀逸センチな旋律。お聞き下さい。
「白い冬」、ふきのとう、1974年
初めての秋を経た初めての冬。筆者も寒さ堪えてコタツに潜り込んで寝入ってしまったこともしばしば。
同郷の上京・友人たちの中には一冬越しただけで、常夏の生まれ島に逃げ帰った輩も数人いました。
上京後、初めて住んだ家は、東京は中野坂上の隙間風だらけの小さな木造アパート。
それに、
寒い「冬」の後に訪れる「春」がまた素晴らしい季節です。
冷たく白い厳しい冬、その春訪れ待ちもその中にあります。
この冬もまた、明るい春を待ち、望む筆者です。
By 講師T
「追記」
前々回の当コーナー(243回)で取り上げたレオン・ラッセルの「ア・ソング・フォー・ユー」の続報です。
バック演奏はピアノとホルン(或いはバス・トロンボーンか?)と記しましたが、トロンボーンとの事です。
前回の「レイズ・ミー・アップ」の際に言及しました筆者・高1時の吹奏楽部の先輩が教えてくれました。
かつてトロンボーン奏者だった彼、担当楽器の特徴の音程の円滑な高低グリッサンドを指摘しました。
トロンボーン特有の長いU字管を使ったスライド奏法が、確かに間奏部分で確認出来ました。
指摘、ありがとう。これからもよろしくね。
同郷の上京・友人たちの中には一冬越しただけで、常夏の生まれ島に逃げ帰った輩も数人いました。
上京後、初めて住んだ家は、東京は中野坂上の隙間風だらけの小さな木造アパート。
筆者、凍てつく日々に身と手を震わせながらも、故郷の南島では味わえない冬情緒にも出会いました。
澄み渡るシベリア生まれの大気による寒色そのものの青空、ケヤキやポプラの木の鋭利な姿や白い雪。
故郷では「夏好き・冬嫌い」だった筆者。冬の繊細な数々の魅力に触れ、いつしか好きになっていました。それに、
寒い「冬」の後に訪れる「春」がまた素晴らしい季節です。
冷たく白い厳しい冬、その春訪れ待ちもその中にあります。
この冬もまた、明るい春を待ち、望む筆者です。
By 講師T
「追記」
前々回の当コーナー(243回)で取り上げたレオン・ラッセルの「ア・ソング・フォー・ユー」の続報です。
バック演奏はピアノとホルン(或いはバス・トロンボーンか?)と記しましたが、トロンボーンとの事です。
前回の「レイズ・ミー・アップ」の際に言及しました筆者・高1時の吹奏楽部の先輩が教えてくれました。
かつてトロンボーン奏者だった彼、担当楽器の特徴の音程の円滑な高低グリッサンドを指摘しました。
トロンボーン特有の長いU字管を使ったスライド奏法が、確かに間奏部分で確認出来ました。
指摘、ありがとう。これからもよろしくね。