月曜日・曇り のち 雨
梅雨時に逆戻りしたような蒸し暑い1日でした。
アトリエは定休日。
恒例の「名作美術館(その52)」をお届けします。
葛飾北斎 「西瓜(すいか)図」 1839年(天保10年)
紙本着色 88,7 x 29,7cm 宮内庁三の丸尚蔵館 所蔵
「富嶽三十六景」などの浮世絵で名高い北斎の晩年の肉筆画です。
画号が多数ある北斎、当作品の署名は、画狂老人卍(まんじ)です。
生涯三万点以上もの作品を制作したと言われる北斎ならではの画号です。
北斎は研究熱心な人物で、自らの作品作りに西洋から入ってきた遠近法や油彩画の技術も取り入れていました。
「西瓜図」は、単なる迫真的なリアリズム・網膜現象に留まらない「気」を静かに発する傑作です。
没年の90才を目前に北斎は、
「天、我をして五年の命を保たしめば 正真の画工となるを得べし」
と言い、老いてなお旺盛な並々ならぬ情熱・気骨を発露しています。
ちなみに北斎の辞世の句は、
「人魂で 行く気散(きさん)じゃ 夏野原」
(人魂となって、夏の原っぱに気晴らしでも出かけようか)
との事です。
蒸し暑い今年の夏、北斎が贈ってくれた暑気払いの「(陽気な)妖気」をおおいに賞味しましょう。
* * *
「ミュージック・ギャラリー(その59)」
「蒸し暑い夏」繋がりと言うことならば、筆者にとってはもうこれしかありません。
暑(熱)い夏が、何故か素敵に感じられる不思議な魅力を持った1曲です。
サマータイム / ジャニス・ジョプリン
SUMMERTIME / JANIS JOPLIN with Big Brother and Holding Company (1968)
ご存知、ガーシュインの名曲、数多くの歌手が歌うサマータイムでも、筆者にとっての究極の1曲です。
90才の長寿を全うした上記の北斎とは対極に、孤独な天才ジャニスは27才の短い生涯を閉じました。
クーラーの無い部屋、ガソリンが蒸れる給油所、窓のない檻のようなバー、眩しく輝く西日の海・・・
酔いどれ米兵達の怒号逆巻くコザの街、けたたましいセミ達の声、土埃を浴びせられる軍用道路・・・
若かりし高校時代、一体何百回聞いたのか、分からないくらい聞きました。
この曲が入ったアルバム「チープ・スリル」のLPレコードは、少なくとも4回は買い換えたほどです。
思い出が詰まったこの曲、半世紀近く経った今でも、CDではなくアナログ・レコードで聞いています。
By 講師T