火曜日、アトリエはお休みでした。
恒例の名作美術館(その20)で、今回も米国の画家 ホーマー(その2)の作品をお届けします。
サブタイトルは、「描かぬ光、描かれた光」です。
Winslow Homer " Firely Red Sunset Scne " 1880
画題は、「火のように赤い夕景色」とでも訳せば良いのでしょうか。逆光・黄昏時の海景です。
前回、紹介したホーマーの作品と同様の水彩画です。が、描法が全くの正反対の作品です。
前回の「ベンチの少女」は、光の白が不透明の白で表現されていましたが、この作品は紙の地色を活かされています。
光を描かないことで、光を表現した水彩画の典型的な描法です。
逆光でシルエットになった前景の岸辺・帆船と水面の影・ボート等は、たっぷりとしたベタ(平)塗りです。
薄暗くなった頭上の空と黒雲は、これまたたっぷりと水を含んだ半透明のウオッシュ(おつゆ描き)です。
夕焼けで赤く染まる遠方の雲とぎらつく水面が、速度のあるドライ・ブラッシュ(かすれ)を用いています。
沈みゆく陽の明るさが残る最遠方の空と波間に反射する光が、描かれなかった紙の地色の白なのです。
その波の光も、近景と遠景ではその大きさや密度・形(水平や垂直方向)も異なって表現されています。
画家の感性と、紙の表面のエンボス(凹凸)を職人的巧みさでコントロール・合体させたホーマーらしい作品です。
東洋の水墨画にも共通する、描かれなかった「間」が「光」となって造り上げた光溢れる水彩画だと言えるでしょう。
(画面内クリックすると、拡大画像が得られます。そのリアルで迫力ある絵画空間を鑑賞してみて下さい。)
By 講師T