アトリエ・マイルストンブログ

2012年4月20日金曜日

ホーマーの油彩画

金曜日、アトリエはお休みです。

恒例の名作美術館(その21)、今日もホーマー(その3)の作品をご紹介します。


Winslow Homer  " West Wind "  1891

前回・前々回とホーマーの水彩画でしたが、今回は油彩画で「西風」と言う作品です。

強風にさらされた夫人が帽子を飛ばされまいと力んでいる後姿が、荒れ狂う波を背景に描かれています。

描かれた画面のどこが主要な部分なのか、一見すると分からない不思議な構図です。
前景・中央部の灌木は主要部ではありませんが、その形の方向性から視線は自ずと遠方の女性に導かれます。
そこで初めて、激しい強風にあおられ白く泡立つ波頭・海と鉛色の空と出会うのです。
そして、なぎ倒された前景の草や波飛沫の形から、画面右側が西だと分かるのです。
そこには、まるで映画の1シーンを見ているようなリアルなイメージが広がっています。
(画面左隅の斜めに記されたサインも、強風で吹き飛ばされそうでユニークですね。)

アメリカ自然主義や写実主義の力強い胎動を感じさせる代表的作品と言えるでしょう。

若かりし頃、初めてこの作品を見た時に印刷が不鮮明だったせいか、背景の海をずっと空だと思いこんでいました。
今でも時々 勝手に空に見立てて、原作を2倍に楽しんでいます。
(画面内クリックすると、拡大画像が得られます。激しい潮騒・強風音や夫人の声が聞こえてくるかも・・・)

By 講師T