一転、季節外れの陽気となった火曜日、アトリエはお休みでした。
代わりの名作美術館(その22)をお届けします。
今日は、前回のホーマーと並んでアメリカ絵画 黎明期を代表する画家トーマス・イーキンズの作品2点を紹介します。
副題は「都会派イーキンズの直線」です。
Thomas Eakins (1844~1916)
" The Biglin Brothers Turning The Skate-Boat " Oil on Canvas ( 1873 )
" Perspective Drawing , Pair-oared Shell " Pencil, Water-color on Paper ( 1872 )
図版上は、逆光でシルエット状の二人の漕ぎ手が描かれた「ボートをターンさせるビグリン兄弟」と言う油彩画です。
図版下は、画家がその油彩本画を制作するにあたって習作・研究用に描いた多数の下絵デッサンの内の1枚です。
本画、デッサン、いずれもボート競技(スカル種目)を題材にした絵です。
油彩画面は上下2等分された水面を基軸として、遠方の自然と、前景は直線をリズミカルに配した心地良い作品です。
次にデッサンの方ですが、画家は透視図法のマス目を水面上に記して、その上にボートと人物を配しています。
それ自体は何も新しいことではなく、古くはダヴィンチの有名なデッサンでも知られるような伝統的な習作方法です。
ここで着目するのは、ボートやオールの直線と同様に、二人の漕ぎ手もまた直線的にその姿態が描かれています。
また、前の漕ぎ手左側には、光の当たった腕の明るさを表す為に背景の樹木が舞台装置のように描かれています。
この外界の直線的な捉え方・描き方こそが、新大陸アメリカの新しい感性のようにさえ私個人には思えてくるのです。
ホーマーとイーキンズの残した足跡は、米国を始め現代にも繋がる多大な感性の遺産であることは間違いありません。
( 画面内クリックすると、拡大画像が得られます。)
By 講師T